うまくいかない研究・開発もそこから学べるため失敗ではないアリゾナ大学 光科学部 眼科光学科 教授 John E. Greivenkamp
自分の目で確認できる光に興味
聞き手:最初に伺いますが,Greivenkamp先生はいつごろから光学分野にご関心を持たれたのでしょうか。Greivenkamp:私は高校時代,物理に大変関心を持ちました。中でも,光学分野には大変興味を抱いたわけです。なぜそれほどまでに光学に興味を持ったのか,自分自身でその理由について突き詰めて考えてみると,“光は実際に自分の目で確かめることができる”からという結論に達しました。電気回路の実験であれば,オシロスコープやボルトメーター,テスターを使ってその結果を確認しなければなりませんが,光学の実験は自分の目で確認することができます。そのほか,私が趣味として写真撮影に興味があったことも理由にあります。
私がトマス・モア大学に入学した1972年ころ,光学分野ではレーザーとホログラフィーが開発されました。それに伴い,大学時代はレーザーとホログラフィーの研究に夢中になり,その結果として大学院のアリゾナ大学オプティカルサイエンスセンターでは光学分野での研究に取り組むことを決意したのです。その後,博士号の取得時には,私にとって大変魅力的な求人募集の案件がいくつもありました。その中の1社に,イーストマン・コダック社(コダック社)があったのです。当時のコダック社は光学分野において,米国で最も進んだ光学技術を持つ企業の1つに数えられていたこと,私が興味のある写真事業を展開していたことなどが決め手となり,入社するに至りました。
入社後は,カメラテクノロジーグループに配属し,カメラレンズの試験などに携わり,工業分野における光学干渉計測の技術や光学部品の形状計測技術などを習得することができました。中でも,光学干渉計測については大学在籍中に勉強していましたが,コダック・リサーチ・ラボラトリーズではさらに深化した計測技術を,また応用技術についても業務を通じて習得する,つまりOJT(on the job training)で学びました。1984年ころの計測技術は,現在のデジタル画像処理の先駆けのようなもので,ネガフィルムの画像を取り込んでテレビ画面に映し出し計測する仕組みでした。当時は,コンピューターがそれほど普及していない時代であり,テレビ画面を使って映し出していたわけです。 <次ページへ続く>
John E. Greivenkamp(ジョン・E・グリービンキャンプ)
1953年米国オハイオ州シンシナティ生まれ。1976年トマス・モア大学文学士号修了。1979年アリゾナ大学修士課程修了。1980年アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター(現カレッジオブオプティカルサイエンス)博士課程修了。1980年イーストマン・コダック社研究科学者。1982年イーストマン・コダック社シニア研究科学者。1987年イーストマン・コダック社,コダック・リサーチ・ラボラトリーズ助手。1992年アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター,および眼科光学准教授就任。1997年アリゾナ大学オプティカルサイエンスセンター(現カレッジオブオプティカルサイエンス),および眼科光学教授就任。●専門のご研究内容:光学干渉測定法,光学試験,光学加工,眼科光学,光学測定システム,光学システム設計,電子撮影システム工学などを研究
●1999?2000年SPIE(The International Society for Optical Engineering and of the Optical Society of America;国際光工学会)実行委員会メンバー。2001?2003年国際光学委員会の米国諮問委員会メンバー。2002年OSA(The Optical Society;)科学技術評議会議長。2002?2003年SPIE教育委員会委員長。1994年APOMA (American Precision Optics Manufacturers Association;米国精密工学会)メンバー。1995年OSAフェロー。1996年SPIEフェロー
●2007年著書「SPIEフィールドガイド幾何光学」,2008年編集「SPIEフィールドガイド 大気光学」,2010年編集「SPIEフィールドガイド 視覚と眼の光学」(すべてオプトロニクス社より発刊)