次世代時間標準「光格子時計」の高精度化に成功東京大学,理化学研究所
研究グループは,絶対温度95Kに冷却した恒温槽の中で,原子を高精度に分光する時計システムを構築し,黒体輻射の影響を室温(およそ296K)のときに比べて,約1/100に低減した。
時計の精度を評価するには、比較する時計が必要であるが,現在の「秒」を定義するセシウム原子時計の精度(およそ1 ×10-15)では,光格子時計の10-18もの精度を評価することができないため,低温動作・光格子時計を2台開発し,黒体輻射による「原子の振り子」の振動数の変化を検証するとともに,2台の時計の再現性を検証した。
このような高精度な原子時計の実現は,「秒の再定義」を迫るだけでなく,従来の時計の概念を超える新しい応用の可能性を秘めている。離れた場所にある2台の原子時計の重力による相対論的な時間の遅れを検出することで,土地の高低差を測る「相対論的な測地技術」への展開のほか,物理定数の恒常性の検証など,新たな基盤技術の創出や新しい基礎物理学的な知見をもたらすことが期待される。