セミナーレポート
ドライバの安心を支えるクルマのUI(ユーザーインタフェース)のための画像処理技術(株)富士通研究所 水谷 政美
本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
■車の周囲を立体表示する全周囲立体モニタ技術を実用化
当社はICTカンパニーとして,ICTで安全で豊かな持続可能な社会の実現に貢献していくことを目指しています。こうした社会に向けて,人・情報・インフラの3側面から,ICTの潜在能力を引き出し,人の活動を支援し,イノベーションを実現していきます。現在,世界的に問題領域の一つとなっているのが,交通/車の分野です。交通事故,渋滞,環境負荷への対策は世界共通で求められる課題です。2030年,世界で自動車は累計13億台を突破。死亡事故は死亡要因の5位に上がってくるというWHOの予測もあります。これらの課題を解決するために車載システムはますます進化していく必要があり,進化を支える技術領域は5つあります。1つめは,車の外界をセンシングして走行環境を理解する技術。2つめは,車がぶつからないよう車両に働きかけ,車両を制御する技術。3つめは,ドライバをモニタリングして,ドライバの状況や意図を理解する技術。4つめは,これらに基づいてドライバに働きかけるUI技術。そして5つめは車両単独では実現し得ない安心・安全・効率を実現するための車両とクラウドの連携を支える技術です。本日はその中で,ドライバに働きかけるUI技術,走行環境のセンシング技術,ドライバのモニタリング技術について,当社で開発した技術をいくつかご紹介します。
まず,1番目の技術は「全周囲立体モニタ技術」です。これは車の周囲360°を見たい方向から立体的に表示する技術です。運転中の視界補助製品として,世界で初めて実用化したもので,死角を削減し,ドライバの安心・安全をさらに向上させます。従来技術では左右前後の4つのカメラで捉えた映像を平面に投影し,真上から見たような映像を生成して,駐車支援に活用していました。しかし,周りがぼやけ,視野が狭いという欠点がありました。そこで3次元の立体投影面(お椀形状)への投影技術を開発。加えて,自由視点高速描画処理技術などにより,周囲だけでなく遠方も含めて広い視野を実現しました。駐車支援を越えて,交差点での巻き込み確認や交差点での車線変更などにも適用できるようになっています。
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(株)富士通研究所 水谷 政美
1995年,東京工業大学大学院修士卒業,同年,(株)富士通研究所入社。以後,画像処理・画像認識技術および,ITS分野を含む応用システムの研究開発に従事。
2003-2004年,米国コロンビア大学客員研究員。