OplusE 2015年7月号(第428号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
超高精細映像の展開 ~4K/8K映像を中心に~
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■4K/8Kテレビ放送の技術の現状と展望
- 東京理科大学 伊丹 誠
- ■“NAB 2015”に見た4K/8Kカメラ動向
- 電気通信大学 石田 武久
- ■4k映像システム開発の歴史と展望,その後
- オノ・アンド・ジーアイティー 小野 定康
- ■超解像技術 ~4Kテレビと超解像~
- 工学院大学 合志 清一
- ■8K/4K光伝送インターフェース“U-SDI”の開発
- 日本放送協会放送技術研究所 添野 拓司
- ■超高精細映像表示素子を複数組み合わせた電子ホログラフィ
- 情報通信研究機構 佐々木 久幸
連載
- ■【一枚の写真】肉眼でも観察できる! 3色(水色,黄緑色,橙色)の高光度発光タンパク質
- 大阪大学産業科学研究所 中野 雅裕, 永井 健治
- ■【私の発言】大学の先生になったら,絶対ちゃんと教育するぞと思っていた
学生は場さえ与えれば自分で育つところがすごいと思った - 科学技術振興機構 研究広報主監 佐藤 勝昭
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第29章 井の中の電子(その2)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】装置の中で回り続ける色フィルター「映像技術史研究家」のメモから
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
特集にあたってO plus E 編集部
本誌では,2013年7月~2014年7月にわたって,「4k映像システム開発の歴史と展望」(小野定康氏)を連載した。この連載の時点では,まだ4k映像システムはいろいろな分野で,次世代映像技術として,試験的に行われている段階であった。しかし,その1年後の現時点(2015年6月)では,4kテレビ受像機が大型家電量販店での展示では広いブースを占めている。4k/8k映像を中心とする(超)高精細映像の分野が大きく変わりつつある。超高精細映像の利用分野は大きく,①閉じたシステムとして,②放送・通信などの規格が重要な分野,である。この特集では,主に②の分野について,特集を組んだ。
①の閉じた分野への利用としては,医用分野での利用,産業分野での利用として,デジタル・シネマ分野,パブリック・ビューイング分野,デジタル・サイネージ分野などで,主に 8k映像で実用化が試みられているが,紙面の都合もあり,今回の特集では取り上げなかった。これらの分野については,あらためて特集を組みたいと思っている。
テレビ放送では,地上波デジタルハイビジョン放送が2011年から本格的に行われ,アナログテレビ放送は停波された。これに伴い,いわゆるHD映像システムの普及が着実に進み,テレビ放送を含めて一段落し,次のステップへ着実に進み始めている。その一例が4kテレビの販売である。
②での大きい変化は放送と通信の合体である。音声のこの分野であるラジオについては,“IPラジオ”として,既に行われている。これがテレビの分野でも,不特定多数の人が同じ映像を見るテレビ放送から,通信技術を放送に組み込むことで,視聴者一人一人が,同じチャンネル内でも好みの精細度の映像や好みの音声品質,好みのカメラ映像を選べるようになる。この変化は2014年から始まり,この先,単なる映像の高精細化にとどまらず,インターネットとの融合が大きく進んでいくことになる。
放送に関しては,2016年に衛星放送などで始まる4k/8k放送では,映像と音声などをパッケージにして送る多重化方式が,それまでのMPEG-2 TSから,MPEG Media Transport(MMT)という規格に変わる。MMTでは,映像や音声などを,IP(internet protocol)パケットに格納して送る。放送と通信の伝送路の区別が完全になくなる。テレビ受像機自体も変わる。テレビ受像機は,放送を受ける機器という役割とは別に,家庭や職場での映像や情報のハブとしての役割が比重を増す。現在,4k映像への対応が加速しているが,同時にHTML5という最新のHTML仕様の実装も進んでいる。テレビ受像機がHTML5に対応することで,ようやく本物のスマートテレビとなり,モバイル機器とのコンテンツのやり取りがシームレスになる。
放送とテレビ受像機の変化は,テレビ放送をまったく新しいサービスへと変えていく,世界初の試みである。
放送用コンテンツの大部分は現在既に,4k規格で制作されており,4k放送への準備は着々と進んでいる。
以降の記事で多く出てくる映像規格の画素(pixel)数について,簡単に記しておく。
1:HD(High Definition)規格
1:地上波放送HD規格:1440pixel(H)x 1080pixel(V)
2:フルHD規格:1920pixel(H)x 1080pixel(V)
2:4k規格:3840pixel(H)x 2160pixel(V)
3:8k規格:7580pixel(H)x 4320pixel(V)
“4k/8k映像システムを中心とする超高精彩映像系がどのように展開していくのか”を,見極めるために本特集を以下のように企画した。
現状を見るために,まず,「4K/8Kテレビ放送の技術の現状と展望」について,伊丹誠先生(東京理科大学・電子応用工学科)に,次にプロ用ビデオカメラについて,「“NAB 2015”に見た4K/8Kカメラ動向」と題して,石田武久氏(映像技術ジャーナリスト)にお願いした。
次に,最初に述べた連載記事をふまえて,「4k 映像システム開発の歴史と展望,その後」のタイトルで,小野定康氏にお願いした。
4kテレビが売られているとはいえ,地上波放送はまだ行われていないので,現在のHD規格で放送/受像される映像を少しでも高精細映像に近づけるための技術として,「超解像技術~4Kテレビと超解像~」として,合志清一先生(工学院大学 情報学部 情報デザイン学科)にお願いした。この記事だけでわかりにくい場合には,参考文献他を参照されたい。
そして次に,高速信号処理および伝達が必要な技術として,「8K/4K光伝送インターフェース“U-SDI”の開発」を,添野拓司氏(NHK技研 テレビ方式研究部)にお願いした。
最後に,これまでの記事とはまったく異なる,表示デバイスとして高精細表示パネルを用いる「超高精細映像表示素子を複数組み合わせた電子ホログラフィ」の研究の現状を,佐々木久幸氏((独)情報通信研究機構)にお願いした。
8k放送については,NHK技研公開(2015年5月末)で,現在BS放送で使用しているBSAT-3Bを使って8k衛星放送実験がデモされた。実際の8kの放送については,2016年に試験放送開始,2018年実用放送開始,東京オリンピック開催の2020年には本格普及,が想定されている。
一方,韓国のNABであるKOB(2015年5月19~22日:Soul)では,2018年の韓国・平昌で開かれる冬季オリンピック大会を 4kテレビ放送することを目指して,準備が進められており,日本からも多くの映像機器関連メーカーが出展していた。
最後に,テレビ放送(もちろん白黒)普及のトリガーになった「世紀のご成婚」(昭和34(1959)年の皇太子殿下と美智子さま,現在の天皇皇后両陛下)の映像が,CS放送の4k専門チャンネル「スカパー4k総合」で,この7月26日(日)に4k放送される。元のコンテンツは映画フィルムで撮られたものであり,デジタル・リマスター化して放送されることを付け加えておく。
参考文献
- 4k時代の画像処理!超解像アルゴリズム;Interface 2015年6号,CQ出版社
広告索引
- エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)428-997
- FITリーディンテックス(株)428-007
- オーシャンフォトニクス(株)428-008
- オーテックス(株)428-999
- オフィールジャパン(株)428-002
- (株)東京インスツルメンツ428-003