キラーT細胞に重要な樹状細胞の生体内可視化に成功理化学研究所,和歌山県立医科大学,科学技術振興機構 研究グループ

 理化学研究所,和歌山県立医科大学,科学技術振興機構の研究グループは,がんや細胞内病原体に対する免疫に重要な樹状細胞の働きを,生体内で可視化するイメージング解析技術の開発に成功したと発表した。
 体内に侵入した病原体や接種されたワクチンは,免疫細胞の一種である「樹状細胞」が認識し,T細胞を活性化することで,獲得免疫が働く。樹状細胞には多くの種類が存在し,病原体やワクチンの種類に応じて異なった役割を果たす。このタイプの樹状細胞には,リンパ節などのリンパ組織に常在しているものと,皮膚などのさまざまな組織に存在し,リンパ節へ移動してくるものの2種類の樹状細胞があり,それらを識別しながら同時に生体内で可視化し,その振舞いを比較することは,技術的に不可能だった。
 同グループは,これら2種類の樹状細胞だけが,光変換蛍光タンパク質KikGRを発現するマウスを作成した。このマウスの皮膚に青紫色の光を照射すると,皮膚にいる樹状細胞が発する蛍光だけ緑から赤に変化させることができた。これにより,皮膚からリンパ節へと移動してきた交差提示能を持つ樹状細胞を,可視化して追跡できるようになった。さらに,二光子レーザー顕微鏡という特殊な顕微鏡を用い,生きたマウスで,リンパ節に常在する樹状細胞と皮膚から来た樹状細胞とを,赤と緑の蛍光により同時に可視化し,それぞれのCD8陽性T細胞との相互作用を解析できるようにした。今後,感染症やがんの種類に応じて最適な樹状細胞を効率的に活性化するワクチンの設計・開発に役立つと考えられている。

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