セミナーレポート

ICT×ロボット農業に必要な画像技術北海道大学大学院農学研究院教授 野口 伸

本記事は、国際画像機器展2015にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

高齢化や労働力不足など深刻な課題を抱える日本農業

 今,農業にICTが注目されています。その背景にあるのが,日本農業の置かれた厳しい状況です。農業従事者の数は過去20年間で約半減。5年間で23万人減っています。平均年齢が66.5歳ということも非常に大きな問題です。一方,新規就農者は減少の一途で,過去5年間で1万人減っています。全国の耕作放棄地は増加し,40万ヘクタール,滋賀県の面積に匹敵します。その原因は高齢化と労働力不足であり,地域の営農環境・生活環境にも悪影響を与えています。加えて,TPPの大筋合意によって,今後の日本農業の存立が懸念されているという状況です。持続的な農業,強い日本農業を実現するためには,ICT×ロボット技術が欠かせません。
 2015年に設置されたロボット革命実現会議の中では,ロボット新戦略の重要な産業の一つに農林水産業・食品産業が挙げられています。そこでは,トラクター等農業機械にGPS自動走行システム等を活用した作業の自動化。アシストスーツや除草ロボット等を活用した人手に頼っている重労働の機械化・自動化。ロボットと高度なセンシング技術の連動による省力・高品質生産の実現が期待されています。
 しかし,自動走行でGPSを使用する場合,防風林や建物のそばでは精度が出ないといった課題があります。そこで,欧米では画像を使ったローカルセンサーによるナビゲーションが使われています。これは周辺環境を認識して自動で走らせる技術で,管理作業・収穫作業のような相対的な位置と高精度な位置決めが要求される場合に有効です。カーネルメロン大学では,刈取境界線をビジョンで検出し,それに沿うようにステアリングを操作する技術を開発しています。ここには,日陰エリアを日なたの状態に変換するアルゴリズムも搭載されています。イリノイ大学では,NIRカメラを使用し,作物列を認識する技術を開発。高速作業を可能にし,作業能率の向上を実現しています。

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北海道大学大学院農学研究院教授 野口 伸

専門:生物環境情報学,農業ロボット工学
1990年,北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。1990-1996年,北海道大学農学部助手。1997-2003年,北海道大学大学院農学研究科助教授。2004-現在,北海道大学大学院農学研究院教授。

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