セミナーレポート
製造やサービスで期待される新しいロボットに必要なビジョンセンサ産業技術総合研究所 中坊 嘉宏
本記事は、国際画像機器展2015にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
新たな市場として期待されるサービスロボット
1年前に安倍首相は経済の新戦略の中で,日本の活力をロボットで実現するということを目的に「ロボット革命実現会議」を立ち上げました。日本では人口減少が始まっており,10年前から生産年齢人口の減少も起こっています。一方,注目すべきは,老齢人口の増加です。いわゆる団塊世代の方々が高齢者に入っており,今後介護が必要な時代を迎えます。そこで注目されているのが,介護ロボットをはじめとしたサービスロボットです。1980年代,ロボット元年といわれ,産業用ロボットが日本や世界へと広がっていきました。しかし,それも飽和し,新たな市場として期待されているのが,圧倒的な数の多いコンシューマー・プロダクツとしてのサービスロボットです。 しかし,サービスロボットは人にサービスをするわけですから,工場用のロボットと違って,ロボットと人の場所を物理的に分離することができません。そこで課題になるのが安全であり,そのために必要になるビジョンセンサーです。2004年に六本木で自動回転ドアの事故があり,子どもがなくなりました。そのため,大手のビルで自動回転ドアを使わなくなりました。将来伸びるであろう市場が最初の事故のおかげでなくなってしまったのです。サービスロボットの場合にも,我々はそれをすごく恐れています。ロボットが初期に事故を起こすと,将来のサービスロボットの市場が閉ざされてしまうことになるからです。 製品にはリスクとベネフィットがあります。例えば,自動車は毎年何千人も交通事故で亡くなっていて,非常にリスクがあります。しかし,自動車なくして生活や産業が成り立たないわけですから,それを補って余りあるベネフィットがあり,バランスが取れているということになります。リスクの解消には,公的な立場での安全の確認が必要です。そのひとつに認証マークがあります。それらをロボットにも導入していこうという動きがあります。消費者がロボットに期待する安全性は,一企業で負うことはできません。そこで,国と,我々研究機関,認証機関を含めた責任分担体制を組んでいこうとしているのです。<次ページへ続く>
産業技術総合研究所 中坊 嘉宏
2000年 東京大学工学系研究科 石川正俊研究室 博士課程修了。2002年 理化学研究所 バイオミメティックコントロール研究センター研究員。2005年 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 安全知能研究グループ。2008年 同ディペンダブルシステム研究グループに組織変更。2013年 同グループ長。2015年 同ロボットイノベーション研究センター ディペンダブルシステム研究チームに組織変更。