完全大気圧下での光電子分光測定に成功自然科学研究機構,電気通信大学,名古屋大学,高輝度光科学研究センター 研究グループ
多くの触媒反応が大気圧下で起こるのに対し,これまでの光電子分光測定は高真空下にある試料しか測定できず,高真空下の反応に対して得られた知見と実際の大気圧下での反応機構との間にある乖離が問題になっていた。近年,その問題を解決するために,ガス雰囲気下での測定を可能とする準大気圧光電子分光と呼ばれる装置が開発された。しかしながら,一般的な準大気圧光電子分光装置における測定ガス圧の上限は5 ,000 Pa程度であり,これまで報告されている世界最高性能の装置でも15 ,000 Pa(約0 .15気圧)が上限であったところ,SPring-8の電気通信大/ 新エネルギー・産業技術総合開発機構「先端触媒構造反応リアルタイム計測ビームライン」(BL36XU)内に設置された準大気圧光電子分光装置において,測定ガス圧の上限を大幅に引き上げるための装置改良を行い,完全大気圧下での金薄膜の光電子分光測定に成功した。大気圧下における表面反応の直接測定を可能とする本装置は,従来の光電子分光測定などで得られた知見を大気圧下での反応に正確に適用する際に役立つのと同時に,燃料電池や触媒材料の開発のための強力なツールになることが期待される。