タッチパネルにも使えるモスアイ構造フィルム東京理科大学,オーテックス(株) 研究グループ
モスアイとは,「蛾の目」の意味である。蛾の目の反射が少ないことから発見された構造で,数100nm程度の直径を持った円錐状の形状で反射防止効果がある。モスアイ構造はグラッシーカーボン(GC)基板に酸素イオンビームを照射することで形成できる。これまでも,モスアイ構造を用いた反射防止フィルムは,大型ディスプレイ表面に使用されてきたが,この構造はナノオーダーの微細な凹凸形状のため,触ると壊れ,指紋が付き拭き取れない,反射率が劣化するという問題点があった。
今回,GC上のモスアイ形状を特殊な紫外線硬化性樹脂にナノインプリント技術で転写することで,触っても壊れない超高強度の樹脂性モスアイ構造の複製に成功した。さらに,この紫外線硬化性樹脂には,防汚成分が含まれているため,指紋などの拭き取りも可能となった。
また転写されたモスアイ構造は反射防止効果に加え,視認性も向上した。モスアイ構造の強度が上がり,触っても壊れず,容易に汚れが拭き取れ,スマートフォンなどのタッチパネルにも使用できるようになった。また,モスアイ構造表面の水の接触角は150 °以上で超撥水性を示すため,この性質を利用した製品などにも使用できる。