セミナーレポート
ロボットビジョンの現状と展望~生産・物流から生活支援まで~中京大学 工学部長 橋本 学
本記事は、国際画像機器展2017にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
ロボットビジョンの基本課題
ロボットビジョンは,生産ライン,物流の配送センター,一般家庭など,様々なところで使われます。生産においては製造物の認識,配送センターでは商品の認識,近未来の家庭では日用品の認識に用いられます。ロボットビジョンの物体認識には,2つのタイプがあります。1つめは,「特定物体認識」です。認識する対象物が決まっているもので,例えば特定のコップがどこにあるのか,位置と姿勢を認識します。生産ラインでは,特定物体認識が主になります。2つめは,「一般物体認識」です。これはディープラーニングなどで取り組まれている課題ですが,画面に映っているものが何かを一つひとつ認識します。個々のモデルは存在せず,物の名称を一つひとつ言い当てていきます。膨大なアイテムを持ち,次々と新しいアイテムが入ってくる配送センターでは,一般物体認識が必要になります。家庭も同じです。ロボットビジョンのシステムとしては,センサーからの情報をデータ化し,AIなどの認識アルゴリズムで認識結果を出し,それをロボットに送り,タスクを完結させるという流れになります。今,3次元センサー(光学センサー)は,三角測量のアクティブ方式のセンサーが低価格で数多く出てきています。 特定物体認識の基本的な方法は2種類あります。1つめは,アピアランスベースの物体認識です。認識する対象は3Dですが,一般的なカメラで様々な方向から大量の画像群を取得し,入力データも一般の写真を使い,2Dと2Dのマッチングにより推定します。2つめは,モデルベースの物体認識です。最近は,対象物の3Dモデルが入手しやすくなりました。また,価格の安い手頃なレンジファインダーが出てきたので,それらで入力データを撮影し,3Dと3Dのマッチングを行う方法が普及してきています。
現在,特定物体認識の研究では,PCL(Point Cloud Library) として,3Dのアルゴリズムセットの形でライブラリー提供されています。一方,一般物体認識の研究では,ディープラーニングがかなりの実力を有するようになってきています。画像単位の研究から始まり,ディープラーニングによる画素単位の技術で高性能化が進んでいます。
<次ページへ続く>
中京大学 工学部長 橋本 学
1987年大阪大学大学院工学研究科前期課程修了。同年三菱電機(株)入社。生産技術研究所,産業システム研究所,先端技術総合研究所にてロボットビジョン,3次元視覚等の研究開発に従事。2008年中京大学 情報理工学部 教授。2013年より同大学 工学部 教授。2017年より同大学 工学部長。博士(工学)。1998年度日本ロボット学会実用化技術賞,2012年度画像センシングシンポジウム優秀学術賞,2015年度精密工学会画像応用技術専門委員会小田原賞,2017年度IWAIT Best Paper Award等受賞。