セミナーレポート
社会の安心・安全を支える顔認証技術の紹介NEC バイオメトリクス研究所 高橋 巧一
本記事は、国際画像機器展2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2019年3・4月号(第466号)記事掲載 <<
顔認証の基礎
個人認証は,システムに登録した人物と利用者を認識する行為です。「PCにパスワードを使ってログインする」「社員証を使って社員ゲートを入る」「マイナンバーカードを使って住民票の写しを取る」。そのように,本人が誰であるかを確信をもって言えるようにすることで,その人や社会に対してメリットをもたらします。生体認証はバイオメトリクス認証とも言われ,人間の身体的特徴や行動的特徴を利用した個人認証の一部です。スマートフォンに入っている顔認証や銀行のATMの指静脈による認証,指紋による犯罪者データベースとの照合など,最近は日常生活には不可欠な技術となってきています。個人認証は大きく「知識認証」「物理認証」「生体認証」の3つに分けられます。知識認証はパスワードなど記憶によって自分だけが知っているものです。これは覚えていることが前提になりますから,忘れてしまうというリスクがあります。物理認証は,社員証やマイナンバーカードなど本人しか持っていない唯一の物理的なものにより認証するものです。所有していることが前提ですから,紛失,盗難,貸与によるリスクがあります。生体認証はそれぞれの生体の個体差を使って認証をするものです。なりすましや紛失,盗難されないというメリットがあります。ただし,成功率が100%ではないというリスクがあります。こうした違いを理解したうえで,適切に使い分け,組み合わせる(多要素認証)のが重要になります。
生体認証を使う場合,実用を考えると,指紋認証と顔認証にたどりつきます。その中でも,顔認証は,「利便性」と「高精度」を両立する唯一の技術です。顔認証は高い照合性能があり,専用機材がいらずカメラなどの既存の資産を利用可能で,利用者が意識せずに使えます。これらを非接触認証と呼びます。顔認証の応用には,スマートフォンの顔認証ログインや,入出国審査,犯罪捜査などがあります。ただし,顔認証は環境変化の影響を受けやすく,照明,年齢,顔向きなどの変化によって照合性能が低下します。したがって,照合性能の向上が重要になります。
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NEC バイオメトリクス研究所 高橋 巧一
2015年 慶應義塾大学大学院・理工学研究科にて博士号取得。現在,NEC・バイオメトリクス研究所にて,顔認証の研究開発に従事。