セミナーレポート
自動運転をめぐる法整備の最新動向明治大学専門職大学院法務研究科 自動運転社会総合研究所所長 中山 幸二
本記事は、国際画像機器展2018にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2019年5・6月号(第467号)記事掲載 <<
技術開発の加速化と法的整備の動き
自動運転をめぐる技術開発は急激に発展しています。これに対し,新しいテクノロジーをめぐる関連法規の整備については,技術開発が進んである程度の普及と安定が生じた後,関連する法規が整備されるのがこれまでの歴史でした。ITS(Intelligent Transport Systems)関連の技術開発の加速化に対し,関連法規の整備は非常に遅れている(公道実験にも法規制上消極的)との認識が一般的でしたが,2013年11月,ITS世界会議・東京モーターショーから大きく状況が変化しました。2014~2015年には,国際的な道路交通条約であるウィーン条約とジュネーブ条約の改正という国際的な動きが加速し,国内でも内閣府が世界最先端の自動運転の技術を国家戦略として定め,戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を設置し,関係省庁横断で推進することになりました。官民ITS構想で法整備の課題が詰められており,国家戦略として規制緩和し,特区を活用した自動運転の実験も認められました。
2015年10月には,道交法改正や公道実験について,技術者だけでなく法律学者も入れた警察庁での有識者検討会が始まりました。その後,実験については緩やかなガイドラインで公道実証が促進され,日本は今や世界一使用しやすい実験場と言われるまでになっています。ガイドライン策定公表により,法律の改正を待たずに,どこでも実験できるようになり,大手企業に限らず,大学の研究室でも個人でもできる建前になっています。一定のガイドラインは示されていますが,規制がなく,特別な許可も必要なく,ガイドライン以外の実験も認められ,黙認からさらには推進へと変わってきているのです。
そういった中で,損保業界も自動運転に関連する新ビジネスの開発と戦略でも大きく動き始めています。2018年のトピックスとしては,Connected(つながる車),Automated(自動化),Sharing & Service(シェアリング・サービス化),Electric(電動化)というCASEの進展がありました。また,国内では,都心で自動運転タクシーの営業運転が開始されました。
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明治大学専門職大学院法務研究科 自動運転社会総合研究所所長 中山 幸二
1979年 早稲田大学法学部卒・1986年同大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学 1986年 神奈川大学法学部専任講師,助教授,教授を経て,明治大学法学部教授 2004年より大学院法務研究科専任教授(現在に至る)日本民事訴訟法学会理事,仲裁ADR法学会理事・事務局長,法科大学院協会事務局長を歴任