セミナーレポート
省演算・省電力AI:SOINNの活用事例SOINN(株) 代表取締役CEO 長谷川 修
本記事は、画像センシング展2019にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2019年9・10月号(第469号)記事掲載 <<
SOINNは手元で育てることができる人工知能
私たちは「あらゆる“モノ”に考える力を」をコンセプトに,さまざまなものに機械学習技術を入れていきたいと考えています。当社の技術は,チップやロボット,プラント,全国の災害予測など,コンパクトなものから大規模なものまで幅広い分野で適用実績が広がっています。当社の技術は,ASCII Connected Industries Award 2018で,大賞とFujitsu賞をダブルで受賞,そして,2017年にNEDOのコンテストで「スマホで育てる日本発個人向け人工知能」が,優秀賞,審査員特別賞を受賞しました。SOINNは省演算・省電力のAIで,非常にコンパクトにいろいろな目的に使えるという特徴があります。SOINNは情報をエサとして増殖する細胞群です。SOINNのニューロンはランダムに配置された2つの人工細胞からスタートし,データが入ってくるとその刺激に反応して成長していきます。ディープラーニングと比べ,画像だけではなく,音声やテキスト,センサー情報などを混ぜ合わせることができ,入れられるデータを限定しません。ノイズをカットして情報の純度を上げることができ,短い時間・少ない情報からでも,的確に学習を進めることができます。ディープラーニングの場合は,ロボットに学習させるために,熟練者の方に何千回も動作を繰り返してもらうことが必要になりますが,SOINNの場合は10回程度で済みます。学習済みAIの使い回し,いわゆる転移学習も可能です。しかも,計算は軽く,教師なし学習で必要なラベルつきデータも少量で済みます。SOINNはメイドインジャパンの技術で,特許と商標はSOINN社が所有し,原則として,ライセンス・ビジネスモデルとなっています。PC単位での納品が可能ですから,お客様の「秘密の開示」は不要で,お客様でデータを入力し,手元で成長させていくことができます。学習済みAIは,お客様の所有物として活用でき,「なぜその結果を出したのか」という理由や根拠を出力できます。SOINNは現在,世界でも高い評価を得ています。
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SOINN(株) 代表取締役CEO 長谷川 修
1993年 東京大学大学院電子工学専攻博士課程修了,博士(工学) 通産省工業技術院電子技術総合研究所研究員 1999年 カーネギーメロン大学客員研究員 2000年 経済産業省産業技術総合研究所主任研究員 2002~2018年 東京工業大学准教授 2014年~ SOINN株式会社 代表取締役CEO