見逃されていた細胞ごとのばらつきを可視化するソフトウェアを開発筑波大学,理化学研究所 研究グループ
1細胞RNA-seqデータのリードカバレッジには,既知・新規転写単位,正常・異常スプライシング,アンチセンスRNAやエンハンサーRNAの発現などの様々なRNA関連生命現象が反映されている。これらの生命現象の細胞間変動は,発生・再生過程や疾患において観察される,細胞間での機能の違いに寄与すると考えられるため,リードカバレッジの細胞間変動の可視化は,疾患機序解明やバイオマーカー探索において重要である。しかし,これを効果的に捉えるデータ可視化手法はこれまで存在しなかった。
同グループは,リードカバレッジの細胞間変動を可視化するソフトウェア「Millefy」を開発した。Millefyを,既報のマウス胚性幹細胞(ES細胞)およびトリプルネガティブ乳がん患者由来上皮細胞の1細胞RNA-seqデータに適用したところ,アンチセンスRNAの制御,エンハンサーRNAの発現,非翻訳領域長といった,遺伝子発現量だけでは発見・解釈が困難な細胞間変動を明らかにできることがわかった。
今後,発生・再生研究,がんなどの疾患研究,神経科学といった,1細胞RNA-seqが盛んに用いられている分野において,バイオマーカーの探索や新規機序の発見に貢献することが期待される。