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マンガンノジュール密集域を音で探す:新たな資源探査手法千葉工業大学 次世代海洋資源研究センター 町田 嗣樹

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 海底一面に敷き詰められた「黒い塊」(図1)は,マンガンノジュール(マンガン団塊)と呼ばれる岩石である。マンガンノジュールは,現代のハイテク技術を支える金属元素のレアメタルを多く含み,特に,リチウムイオン電池の原材料として欠かせないコバルトの資源として注目されている。今回,我々の研究グループが開発した新たな資源探査手法によって,日本の最東端,南鳥島の排他的経済水域(以下,南鳥島EEZ)の中には,広範囲にマンガンノジュールが密集していることが映し出された(図2)。この手法は,南鳥島EEZ全域という広域を調査可能とし,密集域の面積も分かる。密集域は,四国と九州を足し合わせた面積に匹敵していた。
 さて,太陽光が届かない漆黒の世界である海底に密集するマンガンノジュールは,どうやって映し出されたのだろうか。その鍵は,調査船に搭載されている音響測深機である。測深機が発した音波が海底で跳ね返り船に戻ってくるまでの時間を計れば,海底の深さ(海底地形)が分かる。同時に跳ね返ってくる音の大きさを聞けば,柔らかい場所からは小さな音,硬い場所からは大きな音が聞こえてくる。例えば,泥の積もった平坦な海底の上に硬いマンガンノジュールがたくさんあれば,そこは反射強度が高くなる。そのことに注目して調査を行い,南鳥島EEZの南東1/4の大半が高い反射強度の密集域であるのを確かめたこと(2016年8月,海洋研究開発機構プレスリリース)が,今回の手法開発に繋がった。
 開発には,反射強度データの特性に伴う1つの難題を克服しなくてはならなかった。それは,たとえ同じ場所を同じ船(同じ測深機)で調査したとしても,観測する時期が違うと観測される反射強度(デシベル値;dB値)の絶対値が変化してしまうことである。広大な南鳥島EEZ全域を1度の航海で網羅することは非現実的であるので,複数の観測データを繋ぎ合わせる必要がある。ただし,繋ぎ合わせるには,データセットごとの絶対値の違いが障害だった。そこで我々は,dB値のヒストグラム解析と海底観察の結果を対応させることにより,データセットごとの異なるdB値を同一基準に変換する方法を見出した。図2は,5回の航海で取得したデータを結合した結果である。既存の反射強度データと今後取得するすべてのデータを結合すれば,全海洋を対象とする“超”広域探査も実現可能である。また,今回開発した探査手法の利点は,密集域の面積を算出できることである。これは,泥ばかりの場所とノジュール密集域とを分ける反射強度の値(閾値)を客観的に決める方法を確立したことによる。今は,密集域内のレアメタルの量を直接知ることはできないが,今後この音響探査技術を発展させ,資源の開発に適したレアメタルを豊富に含む有望海域を,船上からの観測だけで発見できる画期的な探査手法の確立を目指している。

参考文献
・S. Machida, T. Sato, K. Yasukawa, K. Nakamura, K. Iijima, T. Nozaki and Y. Kato: “Visualisation method for the broad distribution of seafloor ferromanganese deposits”, Marine Georesources & Geotechnology(2019)
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1064119X.2019.1696432

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