研究室探訪vol. 17 [東京工業大学 小山・植之原・宮本研究室]小山 二三夫 教授,植之原 裕行 教授,宮本 智之 准教授
あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,東京工業大学 小山・植之原・宮本研究室にお伺いしました。 フォトニクス(光エレクトロニクス)は光ファイバー通信のみならず,イメージング,医療・バイオを含む多様なセンシング,エネルギー応用など,利用分野が大きく拡がりを見せている。本研究グループでは,伊賀健一名誉教授により発明された垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)を用いたフォトニクスへの新たな領域創出を目指している。また,低遅延・低消費電力のための光スイッチングネットワーク,高速光配線,光並列処理,センシング応用,光無線給電によるエネルギー応用などの様々な応用に向けて,光デバイス・光集積技術の研究にも取り組んでいる。
図2 シリコンフォトニクス技術を用いた光OFDMサブチャネル分離合波素子とスイッチング透過特性・発光近視野像
今回は,東京工業大学 小山・植之原・宮本研究室にお伺いしました。 フォトニクス(光エレクトロニクス)は光ファイバー通信のみならず,イメージング,医療・バイオを含む多様なセンシング,エネルギー応用など,利用分野が大きく拡がりを見せている。本研究グループでは,伊賀健一名誉教授により発明された垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)を用いたフォトニクスへの新たな領域創出を目指している。また,低遅延・低消費電力のための光スイッチングネットワーク,高速光配線,光並列処理,センシング応用,光無線給電によるエネルギー応用などの様々な応用に向けて,光デバイス・光集積技術の研究にも取り組んでいる。
小山 二三夫 教授
1985年 東京工業大学大学院 理工学研究科 電子物理工学専攻 博士課程修了 1985年 東京工業大学 精密工学研究所 助手 1988年 東京工業大学 精密工学研究所 助教授 2000年 東京工業大学 精密工学研究所 教授 2016年 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授
1985年 東京工業大学大学院 理工学研究科 電子物理工学専攻 博士課程修了 1985年 東京工業大学 精密工学研究所 助手 1988年 東京工業大学 精密工学研究所 助教授 2000年 東京工業大学 精密工学研究所 教授 2016年 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授
植之原 裕行 教授
1989年 東京工業大学 総合理学研究科 物理情報工学専攻 修士課程修了 1989年 NTT光エレクトロニクス研究所 1999年 NTTアクセスサービスシステム研究所 2001年 東京工業大学 精密工学研究所 助教授 2012年 東京工業大学 精密工学研究所 教授 2016年 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授
1989年 東京工業大学 総合理学研究科 物理情報工学専攻 修士課程修了 1989年 NTT光エレクトロニクス研究所 1999年 NTTアクセスサービスシステム研究所 2001年 東京工業大学 精密工学研究所 助教授 2012年 東京工業大学 精密工学研究所 教授 2016年 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授
宮本 智之 准教授
1996年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 博士課程修了 1996年 東京工業大学 精密工学研究所 助手 1998年 東京工業大学 量子効果エレクトロニクス研究センター 講師 2000年 東京工業大学 精密工学研究所 准教授 2004~2006年 文部科学省 研究振興局基礎基盤研究課材料開発推進室 学術調査官(兼務) 2016年 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授
1996年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 博士課程修了 1996年 東京工業大学 精密工学研究所 助手 1998年 東京工業大学 量子効果エレクトロニクス研究センター 講師 2000年 東京工業大学 精密工学研究所 准教授 2004~2006年 文部科学省 研究振興局基礎基盤研究課材料開発推進室 学術調査官(兼務) 2016年 東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授
[研究テーマ1]光通信ネットワーク・センシングシステムのための光集積デバイス
次世代光通信ネットワークを切り拓く新しい光デバイスの開拓を目指して,「1.面発光レーザーフォトニクスと新機能集積」,「2.マイクロマシンによる新しい光デバイス」,「3.スローライト導波路による光制御」,「4.中空導波路による巨大可変特性とその光回路への応用」などを研究テーマとする。周期構造による光導波路を用いて,光の群速度,位相,遅延時間などを制御する新技術の開拓といった研究に取り組んでいる。周期構造クラッド層を含むブラッグ反射鏡光導波路を用いることにより,光の群速度を大幅に低下することが可能である。巨大構造波長分散により大きなビーム掃引角を可能とする掃引デバイスを提案し,1,000を超える解像点数(非機械式では世界最高性能)を実現している。面発光レーザーとの集積化により,自動運転用の車載や,ロボット,ドローンにおける光センシング技術への展開など,これから広範な応用が期待される。[研究テーマ2]超高速・大容量フォトニックネットワーク実現に向けた光信号処理技術・フォトニック集積デバイス
近年の光通信システムは, 信号あたり100 Gbps,1本のファイバーあたり10 Pbpsを超え,周波数利用効率を向上するための多値変調・マルチキャリア変調方式や,必要な帯域に応じてシステムを変更する技術,波形歪を歪量に応じて適応的に等化する技術,無線・有線の区別なく効率よく情報を収容する符号化・復号化技術が必須となっている。逆伝達関数・位相線形近似・機械学習による光非線形歪補償,2段コム・ポンプ光FWMによる全光デフラグメンテーション用波長変換,光OFDMサブチャネルadd/drop多重・分離回路,有線・無線統合低遅延光アクセス技術とフォトニクス集積素子の実現を目指している。図2 シリコンフォトニクス技術を用いた光OFDMサブチャネル分離合波素子とスイッチング透過特性・発光近視野像
[研究テーマ3]光無線給電システムと光デバイス
通信は無線化が大きく進んでいるが,給電では,既存の無線化方式には伝送距離や電磁ノイズ発生など課題が多い。そこで光ビームを用いる『光無線給電』の実現を目指している。小型軽量で電磁ノイズの発生がなく,短距離から長距離まで,センサー端末などの微小電力から移動体のような大電力までを給電可能になると考えている。これにより,多様なシステムやサービスに新たな変革をもたらすことが期待できる。 実際の研究では,応用に応じた光無線給電システムの構成検討と特性評価を進めている。例えば,40 W出力の近赤外帯面発光レーザアレイと数cm角の太陽電池を用いて,数mの距離で10 W程度の給電が可能である。ビーム走査機構や可変焦点光学系,対象検知機能などを導入し,その複数の連携により,いつでもどこでも効率的かつ安全に給電を可能とするシステムの実現に取り組んでいる。
図3 VCSELと太陽電池による5 m光無線給電の実験例
小山・植之原・宮本研究室より
情報通信技術分野を支える光通信を中心としたフォトニクス分野について,次世代を支える高速・大容量大規模並列光システムの開拓を目指しており,今後,ますます重要性が増して新しい技術が次々に生まれてくる。“深く”研究するとともに,他の学問分野にも“広く”興味をもって,新しい分野を切り拓く気概をもって研究を進めていきたいものである。東京工業大学 小山・植之原・宮本研究室
住所:〒226-8503 神奈川県横浜市緑区長津田町4259
東京工業大学 未来産業技術研究所
フォトニクス集積システム研究コア
すずかけ台キャンパスR2棟
TEL: 045-924-5068 FAX: 045-924-5977
E-mail:koyama@pi.titech.ac.jp(小山)
uenohara.h.aa@m.titech.ac.jp(植之原)
tmiyamot@pi.titech.ac.jp(宮本)
URL:http://vcsel-www.pi.titech.ac.jp/