光を利用した「有機スズジラジカル」の発生に成功東京工業大学,東京大学
有機スズ化合物は,炭素―スズ結合を有する有機化合物で,機能性分子や生理活性物質,医薬品の合成に用いられる重要な化合物群である。その合成にはこれまで,スズアニオンやスズラジカルを用いる合成法が多用されてきたが,さらに幅広い有機スズ化合物を合成するために,新たな手法の開発が望まれていた。
同グループは,光照射によってスズアニオンを励起三重項状態へ変換できれば,高エネルギー体「ジラジカル」として有機スズ化合物の合成に利用できるのではないかという考えを提唱し,様々なスズ元素導入反応を開発した。このスズジラジカルは約50年ぶりとなる新たなスズ化学種であり,今回開発した新手法は,これまでアクセスできなかった多種多様な有機スズ化合物の合成を実現し,材料化学・医薬化学の発展に寄与することが期待される。