OplusE 2012年1月号(第386号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
カメラの進化は止まらない
- ■特集のポイント
- O plus E編集部
- ■いま,カメラの進化が熱い
- 豊田 堅二
- ■「Nikon 1」における撮像面位相差AF
- ニコン 内山 重之,北岡 直樹,鈴木 政央
- ■ユニット交換式デジタルカメラシステムの技術
- リコー 牧 隆史,清水 隆好,吉田 和弘,加賀 良太
- ■プレミアムコンパクトカメラ「FUJIFILM X100」とハイブリッドビューファインダーの開発
- 富士フイルム 近藤 茂
- ■デジタルカメラとデジタルイメージングが変える天体写真の世界
- 山野 泰照
- ■デジタルカメラ画像処理の進歩と進化
- 京都産業大学 蚊野 浩
- ■最新の科学計測用CCD/CMOSカメラの特徴
- 浜松ホトニクス 白井 宏幸,杉下 財
連載
- ■【一枚の写真】高速に動く物体の3次元動画イメージング
- 京都工芸繊維大学*,久保田ホログラム工房**,神戸大学***,角江 崇*,米坂 綾甫*,田原 樹*,栗辻 安浩*,西尾 謙三*,裏 升吾*,久保田 敏弘*,**,的場 修***
- ■【私の発言】小集団的発想こそ日本のオープンイノベーション
- 宇都宮大学 オプティクス教育研究センター コーディネータ 小野 明
- ■【第10・光の鉛筆】1 ストローベルの定理再考1 Clausius・Strauvelによる証明
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第78回 80. サンプリング定理
- 東芝 本宮 佳典
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【研究所シリーズ】理化学研究所 極端紫外レーザー誘起による集団的自発放射(超蛍光)
- 放射光科学総合研究センター 永園 充
- ■【ホビーハウス】ステレオ写真の本(93)―クロマデプス3Dメガネで「魔法のじゅうたん」
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
カメラの進化は止まらないOplusE編集部
「いま,カメラの進化が熱い」―本特集の巻頭を飾っていただく豊田堅二氏による記事のタイトルからそのままお借りした言葉だが,その言葉通りの様相を呈しているのがカメラ開発の最新事情といえよう。低価格を売りにしたコンパクトデジタルカメラ市場が一段落し,マニアをうならせた高機能デジタル一眼レフカメラの隆盛を経て,今は「ミラーレス一眼レフ」と呼ばれるコンパクトでレンズ交換が可能なカメラに注目が集まっている。このカメラは,これまでほぼ100%男性に占められていた高機能カメラ市場に女性という新たな層(いわゆる「カメラ女子」)を呼び込み,さらにはコンパクトデジタルカメラからのステップアップ層まで取り込むという効果を市場にもたらした。このように,ここに来て,その昔はプロしか使いこなせなかった高機能を誰でもどこでも安価に使えるようになってきた一方で,その多彩な機能の詳細や開発の状況は意外と一般に知られていない。ユーザーの要求に沿うことが生き残りの条件と考えるカメラメーカーが新たな機能開発を積極的に進める中,今回の特集では,カメラの開発者から周辺機器の開発者,さらにはカメラマニアの方にも満足していただけるような,新しいカメラの機能や構造,進んだ使い方などを解説する特集とした。
まず1番目の記事は,現状のカメラの「ホットな」開発状況を「いま,カメラの進化が熱い」と題して,元(株)ニコンの豊田堅二氏に俯瞰(ふかん)していただいた。話題のミラーレスカメラに至る開発経緯から,そこで問題となるシャッターの電子化やオートフォーカス,そしてますます重要になる画像処理について興味の尽きない話題を簡潔に述べていただいている。開発者からマニアの方まで大いに参考になる内容といえる。
次に,ニコンが満を持して発表したミラーレス(ニコンでは「レンズ交換式アドバンストカメラ」と呼ぶ)一眼カメラ「Nikon 1」の開発の要となった撮像面位相差オートフォーカス機構について,ニコンの内山重之氏,北岡直樹氏,鈴木政央氏からいち早く解説をいただいた。同機構を可能にしたCMOSセンサーと処理エンジン,レンズシステム,そして制御アルゴリズムについて,それらの技術を総括して述べている。
3番目は,現在,カメラ市場でハイレベルなマニア層に評価が高い(株)リコーのユニット交換式デジタルカメラシステム「GXR」を,同社の牧隆史氏,清水隆好氏,吉田和弘氏,加賀良太氏に解説してもらった。レンズと撮像素子,画像処理エンジンを一体化した交換ユニットという従来にない構成によって,新しい需要を生み出しつつある期待の製品である。ハードウエアの基本構成から,画像処理の役割分担,着脱機構,ユニット間の画質統一など,読者の「知りたい」ニーズに応える内容となっている。
ここ最近のヒット商品として,富士フイルム(株)の「FinePix X100」は見逃すことができない。ただ単にレトロなスタイルというだけでなく,最新の技術を盛り込んだ中身は最先端カメラそのものだ。その技術開発の中核をなすのが光学ファインダーと電子ファインダーの両者を組み込んだハイブリッドビューファインダーである。4番目の記事では,富士フイルムの近藤茂氏にこのハイブリッドビューファインダーを中心に,その構成や機能,メカ構造,光学設計などについて解説していただいた。
5番目は,ここまでの製品技術の解説記事から一変して,アマチュア天体写真の世界で高名な山野泰照氏に先端ユーザーの視点から,デジタルカメラとデジタルイメージングが撮影のハイエンド領域で何を変えたのか詳説していただいた。デジタルカメラの高画素化,高感度化によって難易度の高かった天体写真撮影が身近なものになりつつあることや,画像処理による新しい撮影スタイルと見せ方の可能性を示していただいた。今月号の表紙は,この山野氏の作品をお借りして構成したことを一言伝えておきたい。
6番目は,デジタルカメラと切っても切れない画像処理について,最新動向を京都産業大学の蚊野浩先生に解説してもらった。デジタルカメラを使うユーザーなら誰もが知っている顔検出や移動被写体の追跡,超解像,デジタル手ぶれ補正などの技術を概説していただき,次世代カメラの一つの進化方向となり得るライトフィールドカメラについて述べていただいた。
最後の記事は,今回の特集では詳しく触れなかった要素技術のうち,どうしても外せない撮像素子(画像センサー)について,浜松ホトニクス(株)の白井宏幸氏と杉下財氏に解説していただいた。あえて一般のカメラ向けではなく,最先端の科学計測用カメラ向けのCCDおよびCMOSカメラの最新状況を説明していただくことにより,今後のデジタルカメラの開発方向性を占う一環とさせていただいた。