OplusE 2013年9月号(第406号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
デジタルカメラの新展開
- ■デジタルカメラを薄型テレビの二の舞にするな
- O plus E 編集部
- ■カメラ業界地図の動向
- 日本カメラ博物館 市川 泰憲
- ■デジタルカメラの発展の行方
- 写真家 桃井 一至
- ■最近のデジタルカメラに見る注目技術~ミラーレスカメラとシャッター~
- 豊田 堅二
- ■ソニーE 35mm F1.8 OSSに見る光学設計の進化
- ソニー 大竹 基之
- ■小型レンズモジュールの行方
- 船橋光学設計事務所 小野 賢治
- ■ライトフィールドカメラ
- ニコン 岩根 透
- ■5軸対応手ぶれ補正システム
- オリンパス 江澤 寛
- ■デジタルカメラで楽しむこだわりの表現~大サイズセンサーとRAWデータの活用~
- 山野 泰照,塩田 和生
特別企画 画像センシング展2013 特別招待講演レビュー
- ■誰にでもわかる「特別招待講演」● カメラアプリ
画像処理を前提にした写真撮影で,小さいが故の限界を突破 コンパクトデジタルカメラを侵食し,進化するスマホカメラ - モルフォ 高尾 慶二
- ■誰にでもわかる「特別招待講演」●メディカル
多数の薄い断層面から異なる断面や身体の3次元画像を作成,画像診断におけるセンシングと画像処理技術 - 国際医療福祉大学 縄野 繁
連載
- ■【一枚の写真】ナノスーツの開発~高真空環境下で生命維持~
- 浜松医科大学*,名古屋工業大学**,東北大学***,針山孝彦*,高久康春*,鈴木浩司*,太田勲*,石井大佑**,村中祥悟*,下村政嗣***
- ■【私の発言】研究というのはできないことに挑戦していくほうがいい
- 東京電機大学 堀内敏行
- ■【第10・光の鉛筆】21 Listerのアプラナティック焦点と顕微鏡対物レンズの設計
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】98 100.ルジャンドル陪関数の計算
- 東芝 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第7章 光は曲がる(その2)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【4k映像システム開発の歴史と展望】2章 映画とテレビとPC
- 小野 定康
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【研究所シリーズ】国立情報学研究所 半導体マイクロ共振器における励起子ポラリトン凝縮の研究:高励起領域における半導体レーザーとの違い
- 情報学プリンシプル研究系 堀切 智之
- ■【ホビーハウス】3Dジグソーパズルの分類(その3)
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
デジタルカメラを薄型テレビの二の舞にするなOplusE編集部
カメラはミラーレスを中心として,今でも発展が続いている。2012年1月号の特集「カメラの進化は止まらない」から1年半以上経過したが,この間にキヤノンはミラーレスの販売を始めた。ミラーレスにはさまざまな画面サイズがあるが,これは各社のマーケティング戦略が反映されたもので,産業の展開としても興味深いところである。35mm一眼レフからAPS一眼レフ,ミラーレス一眼,コンパクトデジタルカメ,携帯用カメラまで,どのように発展し生き残っていくのであろう。技術だけでなく営業戦略について,当事者はもとより一般消費者からみても目が離せない状況である。サムソンのカメラも海外では好評のようであり,少し古いデータであるが,Web1)によると,2010年のデジタルカメラの世界シェアは10%を越えて,キヤノン,ソニー,ニコンについで4位である。2013年3月の朝日新聞では,サムソンの薄型テレビのシェアは,2005年は11%で4位であったが,2012年は27.7%で1位となっている2)。カメラについても同様のことが起きないのだろうか……。
DRAMや液晶パネルは装置産業であって,極端に言えば製造装置だけ買ってくればどうにか作れるもので,ゼロからの技術開発は必要としない。これに対し,カメラレンズはノウハウの蓄積がものを言うとされるが,安心はできない。聞くところによると,サムソンのスマートフォンのシェアはかなり高いが,その中の技術・部品は半分以上が日本製だそうだ。桃井さんの記事でも触れているが,サムソンのマーケティング力は日本企業をかなり凌駕しており,日本の脅威になることも考えられる。
ハイテクの代表格ともいえるステッパーでも,新興国ではなく超先進国のドイツ・オランダ連合に苦戦を強いられている。これもマーケティング力不足が1つの大きな要因だったように思える。一世を風靡したウォークマンがi-Podに取って代わられたように,携帯音楽プレーヤーについても同様であろう(ただし,例えばソニーが先鞭を切った場合には,米国政府の著作権圧力でつぶされていたかもしれず,さらに日本政府の政治力が必要だったかもしれないが,半導体摩擦では完全に政治力不足であったと思う)。カメラではないが,米国のベンチャー会社が出したスポーツ向けハンディービデオカメラGoPro(ゴープロ)3)は評判ということである。このニーズを日本企業が見逃していたのならば,マーケティング力不足であろう。
日本のカメラショーであるCP+には,日本カメラ工業協会に所属している会社だけしか参加できないという規約があるが,ドイツや韓国メーカーが出展するようなショーにしなければ,情報を吐き出すだけの一方通行になってしまい,自分の首を絞めかねない。カメラ業界は,旧態依然ではなく,門戸を広く開放しなければ,今後の展開が厳しくなっていくであろう。サムソンが日本で販売しないのは,日本メーカーに油断させるためかもしれない。
とはいっても,現在のデジタルカメラ産業は日本が優位である。市川さんが触れているように,日本が国際規格をリードしたことが非常に大きな貢献となっていることは間違いないであろう。ただ,規格の公開については十分な注意も必要だと思う。これは間違った情報かもしれないが,DRAM衰退の一因として,国際規格を決めることで逆に重要な情報を出してしまったからであるという説があるようである。同じようにデジタルカメラの部品規格などから,技術の要点が盗まれてしまうこともあり得るのではないだろうか。慎重な対応も必要に思われる。
日本は得意のハード技術に一層の磨きをかけて他の追随を許さないとともに,不得手といわれるマーケティング力,さらにソフト開発力も高める必要があるであろう(桃井さんの記事にある画像保管サービスもこれに当たるかと思う)。O plus Eの企画も同じであり,今までの技術一辺倒の企画では,世間の要請に応えていないのかもしれない。技術以外の領域は他の雑誌が担当すれば良いという考え方もあるだろうが,今回の企画に当たっては,幅広い観点からの記事をお願いした。カメラ業界に詳しい市川泰憲さんにはカメラ業界の世界的な動向を,桃井一至さんには写真家の立場からデジタルカメラの発展の方向について解説していただいた。最近はミラーレスカメラが非常に注目されているが,豊田堅二さんにはミラーレスで着目されるべきシャッター技術について紹介していただいた。レンズも進化が続いている。大竹基之さんにはレンズ設計の観点からデジタルカメラにおけるレンズの発展について,小野賢治さんには小型カメラの動向,特に携帯カメラの形状変化についての興味ある分析を紹介していただいた。岩根透さんには,4次元情報を得られるライトフィールド技術の原理と動向について解説していただいた。江澤寛さんには,デジカメには必須である手振れ補正の究極である5 軸対応技術について紹介していただいた。最後に,山根泰照さんと塩田和生さんに,デジタルデータについての基本的な重要事項とカメラの究極の楽しみ方とでもいうべき天体写真の撮影・画像処理について紹介していただいた。この他にも,検出器やカメラ内部での画像処理,さまざまな制御技術などの発展も目覚しいが,別の機会にと考えている。
参考文献
- http://digicame-info.com/2011/04/post-251.html
- http://www.asahi.com/shimen/articles/OSK201303060143.html
- http://jp.gopro.com/
広告索引
- (株)ICSコンベンションデザイン406-0019
- (株)インフラレッド406-011
- エドモンド・オプティクス・ジャパン(株)406-997(表3対向)
- FITリーディンテックス(株)406-009
- オーシャンフォトニクス(株)406-003
- オーテックス(株)406-999(表4)
- (株)オハラ406-017
- (株)オプトサイエンス406-013
- (株)コーンズテクノロジー406-014
- (株)コーンズテクノロジー406-015
- (株)システムズエンジニアリング406-002(表2)
- (株)セイワ・オプエティカル406-018
- (株)東京インスツルメンツ406-008
- (株)トライオプティクス・ジャパン406-016
- (株)日本レーザー406-007
- フルウチ化学(株)406-010
- 三鷹光器(株)406-012