第8回 キエフ・モスクワ・サンクトペテルブルグ
モスクワ訪問
キエフ訪問から20数年後(2013年),モスクワで開かれたHoloExpoに作品展示のため招待された。作品はハンドキャリーだが,航空券宿泊代すべて先方持ちの招待に二つ返事で出かけた。突然の招待におどろいたが,実はその前年(2012年),キルギスの光学セミナーに出席したとき出会ったロシアのノヴォシビルスク大学の教授が,ロシアではまだ見られないホログラフィーアートを紹介したいと考え推薦したと聞いた。知る人がほとんどいない会議かと緊張して出かけたら,イギリス,フランス,ギリシャ,キルギスからよく知る顔ぶれを見つけ安堵した。そのとき,1人のロシア人の研究者が親しげに声をかけてきた。「あなたとは前に会っている」と言うが,まったく記憶にない。人違いではないかと返事をしたら,あのとき(キエフの会議)発表したプロジェクトのプランは実現したのかとたずねられた。それは,当時名古屋の野外プロジェクトで,公園を流れる小さく浅い(水深10 ㎝程度の)人工の小川の川底に20 ㎝角の鯉のホログラムを数枚設置するというものだ。太陽光で画像が再生され,水の中で揺らいで見えるという演出である。計画段階を私は講演で紹介したらしい。その後,実現したと答えたが,よほど印象深かったらしく,20数年後に私を見つけ,声を掛けてきたのだった。彼はデニシュークの弟子の研究者であった。それ以降,何度もホログラフィーの国際会議で一緒になり,今は親しいホログラフィーグループの一員である。
展示作品は110 ㎝ ×85 ㎝と50 ㎝×60 ㎝の2枚のフィルムホログラムをロールで持ち運び,現地でアクリルや照明機材を準備してもらった。図3はCG からのイメージで,視点を水平移動すると像が動くアニメーションホログラムである。図4 は展示風景である。会期は短く2日間の展示であった。
モスクワのビザ申請では十分の期日を確保し,ロシア文豪ゆかりの地やトレチャコフ美術館,プーシキン美術館などを堪能した。街は物とサービスにあふれ,キエフの体験からは想像もつかない変貌ぶりに隔世の感があった。
図3 CG からのアニメーションホログラム,HoloExpo モスクワ 2013
図4 展示風景 HoloExpo モスクワ 2013
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