第17回 台湾交流録 part 3 ホログラフィーアート講座の始まり
建築空間に
ホログラムの設置は講座が終わると同時に完了するよう進めた。当初は透過型の状態で設置を考えていた。しかし,両キャンパスのすみずみまで探したが,どうしても適正な空間を見出すことができなかった。そこで,ホログラムの背面にミラーを重ね反射型に変換して壁面装飾とするデザインに切り替えて,やっと良い設置場所を見出すことができた。
ホログラムフィルムは2枚のガラスで挟む(図7 (a))。背面用のミラーは表面鏡がのぞましいので,鏡面加工されたステンレス(図7(b))を使用し,ホログラムとミラーはステンレスのフレームで一体化し壁に取り付けた(図8)。かなりの重さになるので,取り付ける壁は頑丈であることが条件だ。設置場所は公館キャンパスの総合館のエントランスの正面の壁(図9(a))と決まった。美しい石の壁面にアンカーを打ち込む許可を得て,ホログラムを設置した。天井には光源を取り付けるための細工と電気工事を行った。このビルはキャンパスの正門を入るとすぐ左手にある建物で,カンファレンスやセミナーのための施設である。昼間,道路を挟んで反対側から建物を眺めたシーンが図9(b)である。人々は門を入り左手の建物を眺めると,このようなシーンが見えてくる。建物の玄関は道路面から高度差があり,人が玄関に入るには階段を上るのだが,その時自然に目の高さが変化する。それにつれてホログラムの色彩も変わるという仕掛けである。もっともこの効果に気付く人がどのくらいいるかは不明だが。
設置終了後,作品の前で完成祝いの式典とパーティが開かれた。招待客の中には新竹の知人たちもかけつけてくれ,パーティの歓談中は,会場脇では音楽学科の学生によるクラシックのカルテットがずっと演奏されて,さすが総合大学,粋な演出だなと感心した。
6月末,台湾の仕事をすべて無事に済ませ,急いで東京に戻った。2週間後に中国の深川で開催されるISDH(International symposium on display holography)に出席するためだ。深川には香港経由で入境したが,あの時,現在の香港情勢を誰が想像できたであろうか。香港も,中国本土も,私は初めてで,なかなかおもしろい経験であったが,このISDHについてはまたの機会に譲る。
予期したくなかった出来事
忙しかったこの年の夏も過ぎようとするころ, 再びDr. Hsiehからメールが届いた。
「ホログラムを壁面から取り外しました。今,空調の利いている実験室のテープルの上に平らにして保管しています。」え? 何があった?
(part 4に続く)