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第25回 Art in Holography 2 ロビン・フッド伝説の郷 ―ノッティンガムにて

Art in Holography 2


 話は戻るが,そのようなわけでロンドン以外の地に初めて足を延ばすことになった。ノッティンガムは人口約30万の田園地帯と森林に囲まれた歴史的な都市であった。ロンドンからは鉄道でのアクセスだが,大都市の喧騒な環境とは打って変わった落ち着いた静かな街は,人口の10%が学生という大学都市の雰囲気も醸し出していた。
 議長はノッティンガム大学のAndy Pepper, 副議長は第1回のArt in Holographyを開催したDoug Tyler,そして,諮問委員会のほか,特別顧問にはMatthias Lauk(ドイツ,Museum fűr Holographie & Neue Visuelle Medienの館長),Jasia Reichardt(イギリス,キュレーターで批評家,現代アート,特にメディアアートに造詣が深い),Warren Seamans(アメリカ,MIT museum館長),Nick Phillips(イギリス,De Montfort大学,物理学者,感材処理の研究により高画質の銀塩反射型ホログラム製作のパイオニア。彼の影響か,英国では多くのホログラフィーアーティストたちが透過型でなく反射型ホログラムによる表現を試みている),Jonathan Ross(イギリス,コレクター,ホログラムのみならず歴史的ステレオ写真の収集など)らが名を連ねていた。
 プログラムも通常のホログラフィーのシンポジウムとは大いに異なる。初日はコレクターのフォーラムだった。これは,前回のArt in Holographyではなかったジャンルである。発表者にはRamon Benito(スペイン,ホログラフィーのスタジオ開設やギャラリー活動,“Tiny Magazine”の発行など)の名があったが,彼は,筆者がフィンランドの地下空間での展覧会に出品をしたときのオープニングパーティに,マドリッドからはるばる駆けつけてくれた人物である(OplusE 2019年1・2月号, Vol. 41, No. 1, p. 163)。続いてMatthias Lauk,彼はアメリカのホログラフィーアート作品をいち早くヨーロッパに広く紹介することに貢献した人物だ。筆者とも親交が深い(OplusE 2019年7・8月号,Vol. 41, No. 4, p.626)。そして,Jonathan Ross,彼のホログラム収蔵作品はこのシンポジウムに合わせて展示された。
 次は批評家のフォーラムだ。Frank Popper(フランス, 美術・技術史家,キュレーター,美術評論家)は,Kinetic Art, Op Art, Virtual Artへと現代芸術と技術の関係を探求した。彼の分析と理論は現代美術に関わる多くの者たちに多大な影響を与えている。そして,Jasia Reichardtらの講演が続く。
 2日目からはアーティストたちによる発表だが,各セッションのタイトルがユニークだった。Time Versus Space, Holographic KineticsではPatrick Boyd(イギリス)(図3),Eduardo Kac(アメリカ),Jean-François Moreau(フランス)らの発表があった。

彼らはインテグラルホログラムの視点の移動などによる動きを取り入れた表現を試みる作家たちである。Aesthetic DimensionsではAlexander(アメリカ),Marie Andrée Cassette(カナダ),Pascal Gauchet(フランス)などが名を連ねた。ホログラムのフレームの中に1つの美的宇宙を作り上げ表現しているのだろうか? 3日目は,まずA Gallery Exodus, Holography in Public spacesで,博覧会パビリオンを手掛けたMelissa Crenshaw(カナダ),野外の太陽の下におけるオブジェなどを制作したSally Weber(アメリカ)(図4)や筆者らの発表だった。引き続きMixed Media Installation, Holography Across Média Boundariesでは,ホログラムを金属彫刻の一部に組み入れた作品などを制作するBrigitte Burgmer(ドイツ),ネオン管やガラス素材にホログラムを組み込み立体のオブジェとして作品に仕上げるSam Moree(アメリカ)(図5),プロジェクターを使用して映像をホログラムに投影する表現を試みるDoris Vila(アメリカ)らの発表があった。各セッションの最後にはたっぷりのディスカッション時間が設けられ,それは休憩時間やランチタイム,ディナー時間にも及んで続けられた。シンポジウム会期中は外に出かける暇もなく,学内の建物にこもって,参加者たちは密に充実した時間を過ごすことになった。

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