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第25回 Art in Holography 2 ロビン・フッド伝説の郷 ―ノッティンガムにて

さすが,イギリス!


 実は,ディスカッションタイムで大活躍した空間があった。ディナー前の自由時間,案内された場所,それはなんとキャンパス内の建物の一角にたたずむパブ空間であった! さすが,イギリス! パブ文化は大学構内にもしっかり根を下ろしていたのである。シックなインテリア空間,カウンターに並んだいくつものビールサーバーのタップ,そこから注がれるビールはグラスの上部を絹のような細かく滑らかな泡でおおう。時間がたってもこの泡はなかなか消えない。ついおしゃべりに夢中になって再びグラスを手に取った時も,泡は消えずに残ってくれていた。消えにくい泡へのこだわりはイギリス式らしい。たしかに泡の消えたビールはフレッシュな感じがせず,おいしさが半減した印象を受ける。学内にパブがあるのもびっくりだったが,ファイングレードのビール泡もなぜかおいしさを演出する新鮮な体験と驚きであった。

サプライズ


 今回のArt in Holography 2の開催もSherarwater Foundation(NY MOHの初代館長であったPosy Jacksonの私的基金)からのサポートで実現していた。この基金は毎年数人のアーティストにHolography Awardを授与している。非公開の数人の推薦人によって選考されるという。前にも触れたが,筆者もずいぶん以前に授与された。ある日突然何のお知らせもなく,郵便受けに普通のエアメールの封筒に1万ドルの小切手が同封されて送られてきたのである。すぐには事情が呑み込めずびっくりしたことを覚えている。それはHolography Awardの賞金だったのである。
 シンポジウムも中盤のころ,筆者に内緒話が入ってきた。実は,その年のHolography Awardの推薦人の依頼であった。シンポジウムの最終日に発表するという。ほかの推薦人が誰かも知らされなかった。極秘の選考である。1人に限らず筆者の独断の視点で推薦する名前を手渡した。最終日前日,公式発表の前に,推薦人たちには密かに結果が知らされた。秘密をもつということは,実に人をワクワクさせるものである。受賞予定者を目の前にして,のどまで出かかり危うく口を滑らすところを我慢するのはひと苦労であった。この年,NYに住むIkuo NakamuraとShunsuke Mitamuraが日本人として同時受賞となった。後で中村氏から「石井さん,知っていたのに黙っていたんですね」と言われ,「こちらも言いたくてうずうずしていたのよ」と笑いあった。しかし,彼はなぜ私が事前に知っていたことを知ったのだろうか? すべて秘密裏のはずなのに。

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