ノーベル化学賞に超高解像顕微鏡の米独の3氏スウェーデン王立科学アカデミー
光学顕微鏡はミクロの世界を観察する際,光の回折限界によって制限され,光の波長の半分程度の0.2μmより小さいものは見えなかったが,3氏は技術革新により,より小さいナノスケールの世界を観察できるようにした。
授賞理由となった新技術は2つあり,1つは,ヘル博士が2000年に開発したSTED(誘導放出制御)顕微鏡である。蛍光分子が励起された直後に,蛍光より長い波長のSTED光が当たると,蛍光分子が脱励起する現象を利用して,光の回折限界より細かい範囲で蛍光を放出させて観察する。もう1つは,べツィグ,モーナーの両博士が別々に開発し,2006年に実用化された1分子顕微鏡である。これは,分子1個を見る単一分子計測技術で,補償光学法も応用して光の乱反射を防ぎ,ナノレベルの観察ができるようにした。
これらの新技術で,生きた細胞の中で個々の分子の動きが見えるようになり,パーキンソン病やアルツハイマー病の脳神経細胞の分子を捉えるほか,受精卵の中のタンパク質ひとつひとつまで追跡できるようになり,医学生物学に革命的な影響を与えつつある。
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ,賞金計800万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)は3氏に分けて贈られる。