ノーベル物理学賞決定スウェーデン王立科学アカデミー

 スウェーデンの王立科学アカデミーは10月3日,2017年のノーベル物理学賞を,約100年前にアインシュタインが予言した宇宙からの「重力波」を世界で初めて観測で捉えることに貢献した米国の3氏に授与すると発表した。
 ノーベル物理学賞に選ばれたのは,米マサチューセッツ工科大学のレイナー・ワイス名誉教授と米カリフォルニア工科大学のバリー・バリッシュ名誉教授,キップ・ ソーン名誉教授で,授賞理由は「レーザー干渉計重力波観測装置と重力波観測に対する貢献」である。
 重力波は,質量(重さ)をもつ物体のまわりにできた「時空のゆがみ」が,その物体の動きがきっかけとなって宇宙空間を光速で伝わる現象である。1916年にアイ ンシュタインが「一般相対論」の帰結として予言していた。
 世界で初めて重力波を捉えたのは,両大学が運営する「レーザー干渉計重力波観測所(LIGO)」である。L字型の施設の中で直角にレーザーを走らせ,「時空のゆがみ」がやってきたときに生ずる2つのレーザーの「ズレ」を検出する。その検出に「干渉」を使う。米国のワシントン州とルイジアナ州に施設がある。
 LIGOが重力波の観測に初めて成功したのは2015年9月で,2つのブラックホールが合体したときに発生したとみられている。その後,2015年12月と2017年1月にも検出した。このほか,イタリアにある同じタイプの観測装置「Virgo」でも今年8月に観測に成功し,重力波の存在はゆるぎないものになった。日本でも現在,東京大学が中心となって,岐阜県飛騨市に「KAGRA」を建設している。
 重力波は,ブラックホールの合体などで発生して伝わってくる。光や電波などの「電磁波」では観測できない天体現象を捉えられる可能性があり,新たな「重力波 天文学」の進展が期待されている。
 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ,賞金900 万クローナ(約1億2400万円)の半分がワイス氏に,4分の1ずつがバリッシュ,ソーン氏に贈られる。

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