薄膜トランジスターを部分的なレーザー処理で高速化する技術を開発科学技術振興機構
4K8K放送では,画素数が増加し,画素あたりの表示時間が短くなるため,一般的な大型液晶テレビで採用されているアモルファスシリコン(a−Si)膜を用いた薄膜トランジスター(TFT)素子からなるフラットパネルディスプレイ(FPD)では対応できなかった。a−Si膜よりも高性能な低温ポリシリコン(以下,ポリシリコン)膜のTFTを使えば,高精細化への対応が可能であるが,製造コストが高く,大型テレビへは適用できなかった。
同グループは,a−Si膜のTFT素子のチャネル領域のみをレーザーアニール処理して,局所的に再結晶化することでTFT素子を高速化する技術をもとに,レーザーアニール処理されたTFTの性能をリアルタイムに測定する装置の開発など,量産する際の課題を解決して試作機に実装し,大型ガラス基板に対してその効果を実証した。
開発成果を実装したレーザーアニール装置によるTFT素子の性能向上によって,TFT素子のスイッチ動作が高速化し,扱える電流量が増加することから,高画質対応のFPDパネルの製造が可能になることに加え,従来,FPDパネルの周辺に配置されていたゲート駆動用ドライバーICなども,回路内に作り込むことが可能になり,狭額縁化や低コスト化にもつながる。さらに,FPD製造時にTFT素子の性能がオンラインで把握できることから,品質向上や歩留まり向上にも貢献できると期待されている。