太陽の100億倍明るい「放射光」を用いて触媒的酸化反応の機構を完全解明東京農工大学,大阪大学,京都大学 研究グループ

 東京農工大学,大阪大学,京都大学の研究グループは,放射光を用いて触媒反応溶液を直接観測することで,工業生産にも利用されていながらこれまで未解明であったパラジウム/銅錯体触媒による酸化反応の反応機構の完全解明に成功したと発表した。
 大型放射光施設SPring-8において,太陽の100億倍明るい「放射光」という光を使い,銅原子の原子核を選択的に観測・追跡することで触媒反応中の銅錯体の挙動を明らかにした。しかし,以前のパラジウム錯体の検出に比べて銅錯体の感度が低く,希薄な触媒濃度においても観測を可能とする必要があることから,銅の原子核から放出される蛍光を固体半導体検出器により観測した。
この方法で,パラジウム錯体と銅錯体が共存する触媒反応溶液中の銅錯体を直接かつ選択的に観測し,得られたスペクトルの高度な波形解析技術,触媒反応の各段階における化学反応,触媒反応および反応により生成する触媒の単結晶X線構造解析により解明を行った。その結果,反応当初は二核構造をしていた酢酸銅Ⅱ錯体が,触媒反応溶液中で単核の酢酸銅Ⅱ二水和物に変化していること,2当量の酢酸銅Ⅱが0価のパラジウムを酸化して2価の酢酸パラジウムを再生していること,その際に生成する酢酸銅Ⅰが反応溶液中にある酢酸と酸素存在下で反応して2価の酢酸銅Ⅱが再生することを実験的に証明した。また,配位子はパラジウム錯体には必須であるが,銅錯体に配位すると反応を抑制してしまうことが明らかとなり,事前に配位子と酢酸パラジウムを反応させたパラジウム錯体を触媒とすることが有効であることがわかった。
 この成果により,高強度プラスチックや,印刷技術により電子装置を作成するプリンテッドエレクトロニクスの基盤などに使われる芳香族ポリイミド原料などの効率的な合成が期待される。

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