ヘム代謝産物ビリルビンの植物内分布を可視化 ―蛍光タンパク質を利用したライブイメージングによる解明―岡山大学,宇都宮大学

     岡山大学などのグループは、ヘムの代謝産物であるビリルビンの生きた植物細胞内での詳細な分布を蛍光イメージングにより明らかにし、生合成や輸送経路に関する示唆を与えた。この成果は生細胞内の代謝産物を細胞小器官レベルで正確に可視化した数少ない例であり、植物では光合成や呼吸に必須なことで知られるヘムの代謝産物に関する新たな生理機能の存在を提唱するものである。
     動物ではヘモグロビンの分解で生じるビリルビン,植物では葉緑体でビリルビンが生じるが、ビリルビンが植物で果たす役割はまだ完全に解明されていない。本研究では、ビリルビンとの結合で蛍光を発するタンパク質「UnaG」を発現する遺伝子組換え植物を作出し、共焦点レーザー顕微鏡の観察でビリルビンは主に NADPH* が生産される葉緑体内のストロマに局在することがわかった。個体レベルでは、葉の表皮細胞の葉緑体と、根の表皮細胞のプラスチド(葉緑体前駆体)におけるビリルビンの顕著な蓄積が確認された。
     さらに細胞内輸送システムを調べるため、葉緑体のビリルビン生産を人為的に促進させ他の細胞小器官への影響を調べた。葉緑体でのビリルビンの過剰生産によりプラスチドのビリルビン蓄積レベルが増加、それに伴いペルオキソソームのビリルビン蓄積レベルが低下した。このことからプラスチドとペルオキシソームの間にはビリルビンやその基質であるビルベルジンの輸送経路の存在が示唆された。今後は植物でのヘムやその代謝産物のトランスポーター**の特定が課題になる。

    *還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド。細胞内に最も多く存在する種類の補酵素で、電子と水素の運搬役。光合成で二酸化炭素の合成に必要 **物質の生体膜透過を促進する働きを持つ、生体膜に埋め込まれる一群のタンパク質の一種。

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