【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

太陽光発電する布地福井県工業技術センター*,スフェラーパワー(株)**
増田敦士*,村上哲彦*,笹口典央*
中田仗祐**,中村英稔**,稲川郁夫**,大谷聡一郎**,長友文史**

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 既存の太陽光発電テキスタイルは,フィルムなどの薄層太陽電池をテキスタイルに搭載する方法で作成しているため,搭載する太陽電池の物性に制限されて,柔軟性などのテキスタイルの特性を維持することは困難であった。
 そこでわれわれは,まず織物に織り込むことが可能なフレキシブルな太陽光発電する糸を開発し,その糸を織り込む方法で図1に示す太陽光発電テキスタイルの開発に成功した。テキスタイルの上に並んで見える小さな粒一つひとつが太陽光発電セルであり,写真のように自由な形状に湾曲してもその発電性能を維持している。実際にこの太陽光発電テキスタイルを完全に折り畳んだ状態から元に戻しても発電性能を維持している。
 この太陽光発電テキスタイルを構成する太陽光発電する糸の概略図を図2に示す。通常の単結晶シリコン太陽電池と同等の発電効率で発電できる球状太陽電池(直径1.2 cm)セルの電極方向をそろえて2 本の導電糸の間に接続して構成している。この導電糸は,芯の糸に金属繊維をらせん状に巻き付けた構造をしているので屈曲耐久性が良く,製織工程やテキスタイル加工後の屈曲にも耐えることができる構造となっている。
 さらに,この球状太陽電池セルの特徴の一つとして,発電量がセルに入る光の方向性に依存しないことがある。通常の太陽電池は平面のため直角に入射する光の時が最も効率が良いため,日中の太陽の方向に追随して移動するか,できるだけ直角に光が入射する方向に設置することになる。しかし,この太陽光発電テキスタイルは球状太陽電池セルで構成しているので,幅広い角度の光を受けて安定した発電が期待できる。よって,カバンや帽子,衣服など人が着用する場合でも効率よく発電でき,テントやドーム球場の屋根など曲面で構成される部材への展開も可能となり,幅広い用途での製品化が期待されている。また,太陽光発電する糸をよこ糸として必要な本数だけ入れることで,用途に応じた発電量に対応した太陽光発電テキスタイルを設計・試作することもできる汎用性の高さも特徴である。
 今後の課題は実用化に向けた取り組みである。図1の写真のサンプルは,汎用織機を使用した手作りであるが,現在,国から委託を受けた産学官プロジェクト(戦略的基盤技術高度化支援事業)で2 年後の実用化を目指し,太陽光発電テキスタイルの生産技術や防水などの加工技術を研究開発している。

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