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世界最大の空間光変調器?宇都宮大学 オプティクス教育研究センター 谷田貝 豊彦

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 この空間光変調器(SLM:spatial light modulator)は,横32m,縦17mでおそらく世界最大だと思われます。宇都宮大学オプティクス教育研究センター(CORE:Center for Optical Research and Education)の壁を飾っています(図1)。微風で青空の下,白い雲が映り大きく波打ち動きます。金属ワイヤにつるされた一辺95cmの正方形の金属鏡が約30000枚,市松格子鏡に並んでいます(図2)。SLMの駆動は電気信号ではなく,クリーンなそよ風です。
 COREは,平成19年4月に設立されました。21世紀は「光の時代」と言われています。光技術はわれわれの生活には無くてはならないものに成っています。カメラや顕微鏡,望遠鏡などの光学器械はもとより,音楽や映画を楽しむためのCDやDVDは,光技術が無くては生まれません。情報通信を支えているのも光技術です。また,半導体集積回路(IC)やLEDや半導体レーザー(LD)を製造するのにも光技術は必須です。部屋の照明や野菜の栽培にも光技術は活躍しています。さらに,最先端の学問分野でも,オプティックスは主役です。生命現象の解明にはタンパク質などの分子の状態を精密に観測することが必要ですが,このためにはレーザーを使った分光技術が活躍しています。また,非常に短い時間(フェムト秒)に起こる現象の解明にも光は使われています。
 このような極めて重要な領域で,教育・研究を行う組織が必要であることは明白ですが,残念ながら,わが国においてはこのような機関はありませんでした。
 宇都宮大学が,COREを設立するに至った理由もここにあります。COREは,光技術・産業の強化発展に貢献するため,産学官で協同してオプティカルサイエンスとテクノロジーの分野における教育と研究を総合的に推進しています。幾何光学,光学設計などオプティクス関連の必要単位を修得した修士課程の学生に,オプティクスコース修了証を授与しています。現在までにちょうど200名を数えました。本年度も約60名の学生が取得予定です。企業との共同研究,国からの委託研究,地方公共機関との共同事業なども積極的に実施しております。海外の提携校(アリゾナ大学,中央フロリダ大学など)への学生派遣,共同研究,ショートコースの共同実施などの事業も活発です。このような活動を通して,COREは,わが国および世界でリードできるオプティックスの教育研究拠点形成を目指します。
 またCOREの玄関ホールには,i線ステッパー用レンズやわが国初の1μm描画用マスクアライナー(キヤノン(株))(図3)なども展示しています。世界最大級のクリーンなSLMを見にいらしてください。

SLMの動画を下記URLにてご覧いただけます

  1. http://www.opt.utsunomiya-u.ac.jp
  2. http://www.youtube.com/watch?v=47w6EtxpT3I
  3. http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=Pz90Is6mvMI&NR=1

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