ガンマ線望遠鏡で探る宇宙線の起源京都大学 田中 孝明
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地球には宇宙から絶え間なく高エネルギー粒子が降り注いでいる。これを宇宙線と呼ぶ。宇宙線は1912年に発見されているが,その起源については長らく分かっていなかった。特に,宇宙線の主成分である高エネルギー陽子の起源については観測的に制限を付けることが難しかった。宇宙線の陽子成分の起源を探るにはガンマ線による宇宙観測が鍵を握る。なぜならば,高エネルギー陽子は非常に特徴的なガンマ線放射を出すからである。そのような放射で明るく輝く天体を見つけることができれば,それが宇宙線の起源であると考えることができる。
われわれはフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡1)(図1)を用いて観測を行っている。ガンマ線は可視光のように鏡やレンズを用いて集光することができない。それでは,どのようにして,ガンマ線の到来方向を求めることができるのであろうか。高いエネルギーを持つガンマ線は物質中で電子と陽電子※1の対を生成する。生成された電子・陽電子が飛ぶ方向から入射したガンマ線の到来方向を求めることができるのである(図2)。また,電子・陽電子のエネルギーを測定することで,もとのガンマ線のエネルギーも知ることができる。フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は過去のガンマ線望遠鏡を凌駕する感度を誇る。これは,電子・陽電子を捕らえるセンサーとしてシリコン半導体検出器を用いたため,高い精度でガンマ線到来方向を測定することが可能となったことが大きい。フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は国際協力で開発されたが,シリコン半導体検出器については広島大学をはじめとする日本のグループが主導して開発を行った。
われわれはフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡によるIC 443(図3)とW44と呼ばれる2つの超新星残骸の観測データの解析を行った2)。超新星残骸とは太陽よりも重い星が一生を終える際に爆発した名残である。観測データを詳細に検討したところ,ガンマ線放射が高エネルギー陽子からの放射であると結論することができた。これらの超新星残骸で宇宙線陽子が生成されていることが分かったのである。
宇宙線起源の完全解明に向けて,フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡によるさらなる観測が重要になるであろう。例えば,さまざまな超新星残骸で生成される宇宙線の足し合わせで,観測されている宇宙線の総量は説明できるのであろうか。ガンマ線観測によって数々の超新星残骸を系統的に調べる必要があるだろう。また,宇宙線の生成過程を調べていくには,ガンマ線データだけでなく,電波やX線など他波長の観測データと組み合わせて研究することも重要になるだろう。
われわれはフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡1)(図1)を用いて観測を行っている。ガンマ線は可視光のように鏡やレンズを用いて集光することができない。それでは,どのようにして,ガンマ線の到来方向を求めることができるのであろうか。高いエネルギーを持つガンマ線は物質中で電子と陽電子※1の対を生成する。生成された電子・陽電子が飛ぶ方向から入射したガンマ線の到来方向を求めることができるのである(図2)。また,電子・陽電子のエネルギーを測定することで,もとのガンマ線のエネルギーも知ることができる。フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は過去のガンマ線望遠鏡を凌駕する感度を誇る。これは,電子・陽電子を捕らえるセンサーとしてシリコン半導体検出器を用いたため,高い精度でガンマ線到来方向を測定することが可能となったことが大きい。フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は国際協力で開発されたが,シリコン半導体検出器については広島大学をはじめとする日本のグループが主導して開発を行った。
われわれはフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡によるIC 443(図3)とW44と呼ばれる2つの超新星残骸の観測データの解析を行った2)。超新星残骸とは太陽よりも重い星が一生を終える際に爆発した名残である。観測データを詳細に検討したところ,ガンマ線放射が高エネルギー陽子からの放射であると結論することができた。これらの超新星残骸で宇宙線陽子が生成されていることが分かったのである。
宇宙線起源の完全解明に向けて,フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡によるさらなる観測が重要になるであろう。例えば,さまざまな超新星残骸で生成される宇宙線の足し合わせで,観測されている宇宙線の総量は説明できるのであろうか。ガンマ線観測によって数々の超新星残骸を系統的に調べる必要があるだろう。また,宇宙線の生成過程を調べていくには,ガンマ線データだけでなく,電波やX線など他波長の観測データと組み合わせて研究することも重要になるだろう。
※1 電子と絶対値が等しく符号は逆のプラスの電荷を持ち,質量など他の性質については電子と同じである素粒子
参考文献
- W. B. Atwood et al.: “The Large Area Telescope on the Fermi Gamma-Ray Space Telescope Mission,” Astrophysical Journal, Vol.697, No. 2, pp. 1071-1102(2009)
- M. Ackermann et al.: “Detection of the Characteristic Pion-Decay Signature in Supernova Remnants,” Science, Vol. 339, No. 6121, pp. 807-811(2013)