光の色を変換するプラスチックの新しいメカニズム国立大学法人京都大学 原子炉実験所 中村 秀仁
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従来,測定対象の光の波長とその光を受ける側(検出器や植物など)の検知できる波長の差を解決するため,光の波長を変換する素材(波長変換材)として蛍光剤を添加したプラスチックが使われてきました。これらのプラスチックは,その加工性を利点として,光伝搬用ファイバーから作物栽培用フィルムまで,様々な形状で幅広く使用されています。そして,その光の波長の変換メカニズムは,プラスチックで生じた短波長光を蛍光剤の機能で段階的に長波長光へ変換するとシンプルに解釈されて来ました。
私たちは,光の波長を変換するプラスチックのメカニズムを明らかにするため,蛍光剤であるベンゾキサンテン化合物(Y11)の濃度を広範囲( 約1万倍)で変化させた高純度のプラスチックを製作し,それらの光の応答を詳しく調べました(図)。その結果,ベース素材であるポリスチレンと蛍光剤間で,濃度ごとに異なる混合状態が形成されることを発見しました。またその状態により,3つに区別された段階で変換された光が放たれるという,単純な蛍光剤の機能ではない,新しい光の波長変換メカニズムを明らかにしました。さらに濃度の変化により変換できる波長は,可視光領域を超えて紫外光領域まで著しく広がることを見いだしました。
長い間,これらのプラスチックの光の波長の変換メカニズムは,蛍光剤のシンプルな機能で改良の余地が見いだされないと理解されていたため,新たな素材のデザインや応用におけるブレイクは停滞しがちでした。しかし,上述の研究成果により,利用目的に適した波長変換ができるプラスチック素材のデザインが可能になりました。今後,本研究成果は,光技術産業,電子機器産業,素材産業,アグリ事業などで使用されている様々なプラスチックの性能向上に貢献することが期待されています。
私たちは,光の波長を変換するプラスチックのメカニズムを明らかにするため,蛍光剤であるベンゾキサンテン化合物(Y11)の濃度を広範囲( 約1万倍)で変化させた高純度のプラスチックを製作し,それらの光の応答を詳しく調べました(図)。その結果,ベース素材であるポリスチレンと蛍光剤間で,濃度ごとに異なる混合状態が形成されることを発見しました。またその状態により,3つに区別された段階で変換された光が放たれるという,単純な蛍光剤の機能ではない,新しい光の波長変換メカニズムを明らかにしました。さらに濃度の変化により変換できる波長は,可視光領域を超えて紫外光領域まで著しく広がることを見いだしました。
長い間,これらのプラスチックの光の波長の変換メカニズムは,蛍光剤のシンプルな機能で改良の余地が見いだされないと理解されていたため,新たな素材のデザインや応用におけるブレイクは停滞しがちでした。しかし,上述の研究成果により,利用目的に適した波長変換ができるプラスチック素材のデザインが可能になりました。今後,本研究成果は,光技術産業,電子機器産業,素材産業,アグリ事業などで使用されている様々なプラスチックの性能向上に貢献することが期待されています。
参考文献
- H. Nakamura, Y. Shirakawa, H. Kitamura, N. Sato, O. Shinji, K. Saito and S. Takahashi: “Mechanism of wavelength conversion in polystyrene doped with benzoxanthene: emergence of a complex”, Scientific Reports, 3, 2502(2013) http://dx.doi.org/10.1038/srep02502
- H. Nakamura, Y. Shirakawa, H. Kitamura, N. Sato, O. Shinji, K. Saito and S. Takahashi: “Light propagation characteristics of high-purity polystyrene”, Applied Physics Letters,103, 161111(2013) http://dx.doi.org/10.1063/1.4824467