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新しいことをやりたいと思ったら,周囲が良いと言っている現実を否定しなさいハイウィッツ・テクノロジー 米澤 成二

Highwits

 光ディスクの国際学会で私の考えの成果をいろいろと発表していた関係で,海外のベンチャーから何か新規事業の提案をしませんか,研究投資をしますよ,と言ってくれたのです。そのとき担保なしの投資,ストックオプションなるものを初めて身近に感じました。そこで,前から考えていた内容の商品コンセプト,商品化のタイミング,市場売り上げ予想,開発期間,開発予算,従業員確保のすべてを40頁あまりの事業提案書にまとめて提示したわけです。海外のベンチャー事務所での説明を終えると,goの決定が出たかと思うとすぐ,オフィス探し,人材探し等々準備にかかり,家に帰る時間はほとんどありませんでした。商品試作品を作り,営業活動の売り込みも私がやりました。この会社は,Highwits Technology(高い知恵)という社名で一昨年12月に正式に登記しまして,100%外国ベンチャーキャピタルの金で運営しています。今までの研究一色の生活が一変する,研究馬鹿に会社運営なんかできるはずがないといわれてのスタートでした。しかしこのような転身は海外では珍しくなく,アジアのなかの台湾でも,ストックオプションなどの特典のない大会社は,若者には魅力がないようです。ところで日本は時代が変わってきたといわれていますが,学生の就職などをみてもまだまだ大企業依存主義ですよね。
 Highwitsのマンパワーに関しては,各専門家を自社で100%抱える非効率なやり方はとっておらず,10名程度の一流の専門家に遠隔での支援をお願いしています。やっと1年になりますが,仕事も軌道に乗りはじめ,お茶くみ,掃除から経営,研究まで,すべて自分の判断と責任でできるのは人間として楽しいことです。

辞めた理由

新しいことをやりたいと思ったら,周囲が良いと言っている現実を否定しなさい 私が前の会社を辞めようと決めたのは1996年の2月です。前からずっと独立したいと思っていましたが,最近特に会社と研究者の間の信頼関係が,お互いになくなってきたのではないかという思いが募ったのが大きな理由です。この10年間,誇れる製品といわず,技術すら出ていないのはその結果の表れではないでしょうか。他社の技術動向ばかりに目が向いてしまって,社内の新しい研究成果を事業の戦略に生かす術が考えられないでいるのです。井の中の蛙では困りますが,自社技術に対するこだわりがなくなってきています。その一例が昨年のDV-RAMです。 DVD-RAMは将来の高密度化に壁があります。それを承知で,自分を捨ててまでして,世論に飛びついているのです。技術の会社が自社の技術にこだわらなくなったとき,その会社はもう終わりです。それで自分の会社を作って,自分の技術にこだわった仕事をしようと決断したのです。

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