【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

窒化ガリウムを選んだのはやけくそでしたカリフォルニア大学 サンタバーバラ校 中村 修二

アメリカに骨を埋めるつもりで

 UCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)を選んだ理由は,まず化合物半導体でナンバーワンかナンバーツーに入るということです。
 それから土地柄ですね。田舎で,非常に安全なのです。犯罪がほとんどない。気候も年中春みたいで,リゾート地なのですよ。アメリカ人もみんな住むのには一番いいと言っています。家族全員で住むつもりです。上の娘は今度大学4年生になるのですが,卒業してから行くと言っています。2番めはもうアメリカの大学に行ってて,今度UCSBに移ってきます。下は中学3年生ですが,高校から向こうです。  向こうには永住しようと思っています,今のところは。まあ,年を取ったら分からないですけどね。そうなれば日本に帰りたくなるかもしれませんが。
 UCSBで何をやるかはまだ決めていません。まあ,半導体関係をやると思いますけど。
 まずはアメリカの流儀というかシステムの勉強ですね。どうやってお金を集めるかという。アメリカの先生はお金を集めるのが仕事の大部分らしいですから。日本だと文部省が自動的にいくらかくれますが,向こうは自分で集めないと,研究費ゼロですから。学生にも給料をださないといけないでしょう。学生1人2万ドルですか,学生が10人いたら年間20万ドル集めないといけないのです。大変ですよ。
 日本でも,ベンチャー企業をやれ,とかよく言ってますが,それより大学受験をなくさないとダメですよ。
 今は生まれた瞬間から受験競争でしょう。自我が目覚めたときにはもう,大学生か社会人になっているんですね。大学受験で疲れきって,もう人生の進路もだいたい決まってて。
 僕自身,自分の人生は,と考え出したのが大学1年生の頃です。暇になったからですね。そのときにはすでに先が決まっているのです。それは親とか周りの社会によって決められたもので,自分で決めたものじゃないんです。
 気づいたときには大学1年生。わしはなんでこんなところにおるんやろ,と。頭に来ましたね。大学に半年行かずに考えました。自分はいままで洗脳されてきたんだと思いました。洗脳教育ですよ。自分の意思じゃなくて,自然に受験競争のなかに巻き込まれていったんです。一番頭が活発な大事な時期にですよ。自分で思った人生を生きていないわけです。
 まず,大学受験をなくさないとだめです。
 アメリカは逆ですね。大学はどこにでも入れるから,みんな本当に好きなところへ行く。大学に入ってからめちゃめちゃ厳しい試験があって,それをパスしないと卒業できない。
 この分野の学生をいろいろ知ってますが,アメリカだと優秀な人は卒業してみんなベンチャー企業をやってます。日本は優秀な人は大手家電メーカーでしょ。向こうは意欲満々でベンチャーを始め,こっちは疲れ切って大手メーカーです。
 くだらん大学受験で燃え尽きた人間と,好きな道をバーンとやってる人間とでは,元気さが全然違うのです。
 それに向こうは大学の先生がベンチャーを起こしてもいいのですね。ただ自分は社長はできないから,学生を社長にして自分は顧問みたいな形でやるのですが。
 できる先生は名刺を2枚,3枚もっています。大学の名刺と企業の名刺と。大学の給料は小遣い銭みたいなもので,2枚め,3枚めの名刺で稼いでいるのです。
 日本はそういうシステムができてないから,大学の成果が生きてこないのです。学会では日本人も同じような発表をしているのですけどね。収入はぜんぜん違います。
 日本は均一な人間を作る社会ですよね。製造業には向いているかも知れません。大学受験でみんな疲れさせておいて,均一な人間を作って,みんなサラリーマンにして,製造を頑張ってやって,安くいいものを大量に作って(笑),という社会システムなのです。
 製造だけでは厳しいですよ。いま,台湾,韓国,中国が出てきていますからね。難しいですね,これから。(文責Y.M.)

私の発言 新着もっと見る

色覚の研究,私の場合。
色覚の研究,私の場合。...(9/26) 立命館大学,チュラロンコーン大学 池田 光男
テクノロジーで古い業界の生産性を上げ,さらにその先へ
テクノロジーで古い業界の生産性を上げ,さらにその先へ...(8/7) 株式会社スマテン 代表取締役社長 都築 啓一

本誌にて好評連載中

一枚の写真もっと見る