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光技術の行き着くところは,結局のところ健康問題だと思います。浜松ホトニクス(株) 晝馬 輝夫

PETの開発

 これまで話したことは,運動といった面から見た健康についてですが,それ以外にもPET(Positron Emission Tomography)と呼ばれる装置(写真4)を使って,ガンや痴呆症の早期発見をする研究をやっています。この研究は浜松市の医療センターとも提携しています。
 ガンなどは種類にもよりますが,早期発見して治療ができれば大半は簡単になおってしまうのです。痴呆症の方を完全になおすことは,現在はまだ不可能ですが,早い段階でわかれば進行を止めることはできます。それに,病気の状態を詳しく測定することができれば治療薬だって作ることは可能だと思います。
 このようにして,ボケない,ガンにならないということになれば,現在赤字になっている健康保険や年金を黒字にできるのではないかと思っています。それで黒字になれば,「儲けを半分よこせ」と言っても文句はあるまいと言っています(笑)。
 従来のPETというのは,朝から晩まで1日中測定しっぱなしでも6人測るのが限界なのですが,うちで開発している装置は新しいディテクターを使っており,1日30人ぐらいは測定ができます。実際問題として,浜松地域だけで120万人の人間がいますから,最低でもそのくらいのペースで測定できなければ実用的ではありません。
 ただ,誰も彼も放射性物質を注射してPETにかけるというのは乱暴すぎますから,予備検査などである程度対象者を絞るスクリーニング手法も開発しています。
 この方法を使って,最初に社員のなかの希望者を300人ほど検査したら,これはあやしいという人間を30人ぐらい見つけたのです。この30人を実際にPETにかけたら3人に早期のガンが見つかりました。そこで,この3人のガンを完全に治療したのです。
 これまでのいろいろな測定結果から,全体数の1%の人にガンがあることがわかっていますから,あやしいと思われる人をスクリーニングで2%ぐらいに絞ってやれば検査も効率よくできます。例えば,測定者が100万人いたとしたら,あやしい2万人を1日30人ずつPETにかけるようにすれば装置が2台あればなんとかなるかなと思っています。
 この計画は,現在財団を設立し,検診センターを建てるということで進んでいます。実際に建物も今年3月ごろには完成する予定で,夏頃から測定を開始します。
 私が,医療分野で光技術の応用を考えている理由の1つには,「死ぬまでボケないで健康に働く」という思いがあります。というのも,そのような社会にしないと医療費で国の財政がパンクしてしまうからです。今でさえ30兆円もかかっている医療費が15年もたつと60兆円になるというのです。それで政府は医療費の負担増とか言っているわけですが,病人から銭をふんだくってもしょうがありません。その上,介護保険だとか何だとか言ってるでしょう。これでは若い人はやってられないということになってしまう。そこのところを何とかする必要があると思うのです。

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