特別編(上) 講演 光による人類の未来への貢献光産業創成大学院大学/浜松ホトニクス(株) 晝馬輝夫
正しい道
私どもの関わってきた光の技術は,高柳健次郎先生が浜松でテレビを作ったところから始まっています。私たちは高柳さんのところで,当時ようやく少し分かった光電面の作り方というものをいただいてきました。それは,お金を払ったんじゃなくてタダで貰ってきたわけです(笑)。それを基にして実際何か作ってお客さんのところに持って行ったわけですが文句が出るのです。外国と同じくらいのものを持って行ったのではダメで,「外国より良いものを持って来い」と言われる。それで良いものはどうやったらできるのか,ということを考えざるを得なかった。今にして思うと非常にいい境遇だと思うのですが,当時としてはまったく苦心惨憺なわけで,何もネタ本はないわけで,自分で現象を捕まえて,例えば「光電管の感度がなぜ下がってしまうんだ」ということを考えてここまできたわけです。
そういうことを50年間積み重ねて行くと,だんだんと光に関わる仕事をやっている人間がアカの他人であるという気がしなくなる。「あの馬鹿め,まだあんなことやっている」という感じや,「あー困ったな,こんなことをやる人が出てきた」といった気持ちになる。そうすると,食って行くためには自然と新しい分野を自分で見つけなければいけなくなる。
「新しい分野を自分で見つける」ということはみなさん非常にいい言葉としてお使いになってらっしゃるんですが,新しく見つけたものが,「正しい方法ではなく,逆方向に進んでいたり,この方向に行くと行く先は奈落の底に落ちる」というようなものでは困るわけです。
「これはまだ誰もやったことがない」ということを自分で初めてやるときに,その手法の正しさというものを何で決定するかが重要となります。