特別編(下)「良いものをつくるには,分からないことをひとつひとつ解き明かす必要がある」光産業創成大学院大学/浜松ホトニクス(株) 晝馬 輝夫
返品で増える注文
当時の日本電気なんてのは不思議な会社だった。注文書に200 本とあるから200 本納めたら,100 本不良だと返してきた。次のときに不良代替ということで100 本入れて。するとどういうわけだか向こうは300 本の注文書をよこす。だから不良返品が来るにしたがって注文が増えちゃって(笑)。「不良返品もかわいそうだから,まぁそのくらいの金は出してやらぁ」という親心だったかもしれんけど,何か聞きに行くのも怖くて(笑)。松下電工の方は,あれはやっぱり大阪商人で,東京の商売との違いを肌で感じた。松下電工は,自分の所に注文が来ないときには「今月はいらん」と言う。それで注文が来て急に欲しくなると「今月中に何百本納めてくれ」とくる。「そんなこと言ったって今月はもういっぱいに生産が組んであるから」と断ろうとすると「よそのはキャンセルしろ。ウチの方は値段は倍でもいい」と言う。大阪商人は要らんときには本当に鼻にも引っかけんのに,欲しいときは「倍でもよこせ」(笑)。日本電気の方はそうじゃなくて,毎月きちんと注文書をよこす。どっちが楽だか分からんけれども。まぁでも,そんな物作っている会社,日本には浜松テレビ以外に無かったわけですから,うちが「嫌だよ」と言いさえすればね。