地球上に存在するすべてのエネルギーの原点は水の光分解ではないでしょうか。東京工芸大学 本多 健一
光合成と光分解
先進国における人口増加は年々減少傾向にありますが,発展途上国を始めとして多くの国々では,人口はまだ増加傾向にあります。われわれが子供のころに教わった世界の人口は23億人でしたが,現在では63億人と3倍近くになっており,2050年には93億人という予想が出ているのです。このように,データ的には警鐘が鳴らされているのですが,食料問題に関してはまだ余裕があるためか,政治・経済レベルでは誰も取り上げません。しかしながら,まだ記憶に新しい平成5年に起きた冷夏による米騒動を思い出しても,昨今の世界的規模の異常気象を見れば,いつ何時食料危機が起きてもおかしくない状況にあるのではないでしょうか。
そのように考えますと,そろそろ本格的に食料問題を解決するテクノロジーの研究を始めてもよい気がするのです。
食料問題を解決する科学技術を考えますと,理想的なシステムは,やはり人工光合成です。植物の光合成では,太陽光エネルギーを使い大気中の炭酸ガスから最終的に炭水化物を作り出しますが,その最初の過程が実は水の光分解なのです。
これらのことを考えますと,生物を始めとして装置,機械といった人工物も含め,地球上に存在するあらゆるもののエネルギーの原点は水の光分解といえはしないでしょうか。
水の光分解において重要になるのが太陽光ですが,この太陽光エネルギーというのは面積に比例します。
ですから,例え大きなレンズを使って光を直径1cm程度に集光したとしても元をただせば,レンズの面積分のスペースが必要となるのです。
このように,水の光分解装置の実用化に際しては,地価がコストに絡んできます。地価を考えた場合に問題となるのが日本の地価の高さです。
地価の点から見ますと,世界には有利な国が多数あります。まず思いつくのが中東や中央アジアの砂漠です。砂漠には雨も降りませんからそのような点でも最適な場所といえます。
そして次に考えられるのが海になります。日本は海に囲まれた島国ですから最も現実的な方法が海上にプラントを作ることだと思います。