これからの時代は光学やエレクトロニクス中心の物理教育であるべきではないでしょうか。東京大学 名誉教授 霜田 光一
マイクロ波分光の研究
レーダーの研究を始めて2年後に終戦となり,海軍から大学に戻ってきたわけですが,戦後しばらくはGHQの命令によりレーダーの研究も原子核の研究も禁止されていました。そこで思案したところ,海軍から大学に戻る時に貰ってきたマグネトロンなどのマイクロ波発振器を使う研究を考えたのです。2年間のレーダー研究でマイクロ波に関する技術を取得していましたので,そのマグネトロンを使ってマイクロ波による実験ができないかと考えて始めたのがマイクロ波分光なのです。
大学院を卒業する少し前に助教授になり,助手の西川哲治君や大学院生と一緒にマイクロ波分光を研究したわけですが,当時マイクロ波は最先端の分野で市販の装置もありませんでしたから,実験装置はほとんどが手作りでした。いろいろと苦労はしましたが,マイクロ波分光で調べたホルムアルデヒド分子は,後に宇宙天文学のデータになった結果も出ています。
昭和25年頃になるとマイクロ波分光によるアンモニアのスペクトルを利用した原子時計が作られたというニュースを聞き,われわれも原子時計の研究に取り組みました。
この時はそれまでのものより精度の良い原子時計を作ることができましたが,予想外の誤差源があり画期的な性能を得ることはできませんでした。