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いかに執着できるかに尽きる立命館大学 教授 小野 雄三

3年半で大学を卒業?

聞き手:本日はよろしくお願いします。早速ですが,ご経歴を見させていただいたところ,東京工業大学 理学部応用物理学科のご卒業ということですね。

小野:いや,実は理学部かどうか怪しいのですよ。

聞き手:それはまた,どういう意味なのでしょうか?

小野:わたしが東工大に入ったときは理工学部の所属でした。2年生で応用物理学科に行くことを決めたのですが,その6月に理工学部が理学部と工学部に組織上,分かれたのです。卒業した応用物理学科は理学部の所属学科なので,経歴上はたぶん理学部の所属になっているのだと思います。しかし,学生がいる限り,大学では元の組織が続くのですよね。だから,ひょっとするとわたしは理工学部の卒業になっているのかもしれません。実はよく分からないのです。同期の友人の履歴書を見ると両方のケースがあります。菅直人前首相が同じ卒業年度なのですが,彼は「理学部卒業」と書いていますね。

聞き手:菅氏とは同期なのですか?

小野:いえ,彼はわたしより1学年上なのですが,留年して卒業が一緒だったのです。彼はもっぱら学生運動をやっていましたから,会うこともありませんでした。

聞き手:そういう時代だったのですね。

小野:そうです。わたしは大学紛争世代の人間です。「紛中派」とも言いますね。よく「3年半で大学を卒業したんだよ」と学生に言うことがあります。3年生の後期の2月ぐらいから大学の闘争委員会が学校を封鎖して,夏には大学が機動隊を入れて解除し,今度は大学の管理下ということで大学がロックアウトして,9月からまた大学が始まりました。ですから,2月から9月までは学生という意味ではまったくブランクだったのです。だから,「正味3年半しかいなかった」ということになります。どうやって単位が取れたのか,今になってはよく分かりません。もともとかなり単位は取っていたのですが……。

聞き手:そんな中で,大学ではどのような勉強をなされていたのでしょうか?

小野:わたしは学部卒なのです。大学院に行きたいという気持ちはあったのですが,そういう紛争の状況下ではとても踏ん切れる状態ではなかったし,経済的な問題もあったので,「今はちょっと無理だろうな」という感覚がありました。「半年のブランク」というものが,その後,いろいろと尾を引いているような感じがします。大学に何かやり残した感じをずっと持ち続けていました。それがのちのち,企業から大学に移った一つの引き金,あるいは背景になっているような気がします。大学院に行こうかだいぶ迷った時に,「大学でやらないといけないことができたら帰ってくればよろしい」と言ってくれた先生がいらっしゃったので,それに納得して一応卒業したというかたちでした。
 卒業研究は「ガンマ線の同時計数」といって,原子核が励起レベルに上がってガンマ線を出しながら崩壊する時に,2段階で崩壊するケースで発生する2種の放射線の同時性を調べると,連続した崩壊の途中に励起レベルがあるかどうかが分かるのです。現在の研究とつながっているのは,「ガンマ線も光も電磁波だ」ということだけですね(笑)。でも,あとで考えると,検出器の構造はガンマ線も光もそっくりなのです。当時,ゲルマニウムを使ったガンマ線の検出器が出てきたころで,非常に分解能が高いということで使われていましたが,それはPIN構造を採っていました。フォトダイオードと同じですね。
小野 雄三(おの・ゆうぞう)

小野 雄三(おの・ゆうぞう)

1970年,東京工業大学 理学部応用物理学科卒業。同年,日本電気?に入社して中央研究所に配属。光磁気メモリー,ホログラフィックメモリー,高速レーザープリンター,ホログラフィックレーザー・スキャナー,POSスキャナー,CD-ROM用および光磁気用ホログラムヘッドなどの光情報機器,回折光学,光記録等の研究開発に従事。1999年,立命館大学理工学部教授に転出。ホログラフィックリソグラフィーによる3次元フォトニック結晶の形成と特性解析の研究に注力。現在に至る。工学博士(1985年 東京工業大学)。応用物理学会光学論文賞,新技術開発財団市村賞,科学技術庁長官賞(研究功績者表彰),経済産業省国際標準化貢献者表彰など受賞。応用物理学会フェロー,ISO TC 172/SC 9/WG 7 コンビーナー。

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