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ライバルとなる友を作ろう名古屋大学 産学官連携コーディネーター 虎澤 研示

特許の数はエンジニアの物差し

虎澤:わたしは,大学ではあまり勉強をしなかったのですよ。さらに,物理を専攻していながら電機会社に入ったので,会社では電気関係の勉強を必死にした覚えがあります。大学で勉強することも大切ですが,企業に入っても勉強をしていくことは必要じゃないかと思います。

聞き手:企業に入ると「もう勉強しなくていい」と思ってしまうところがありますね。

虎澤:はい。でもそうじゃなくて,そこから本当の勉強が始まると考えないといけません。大学ではあくまで基礎的なことを学ぶだけですから。資格も積極的に取った方がいいと思いますね。わたしは幸いにしてドクターを取ったのですが,MBAでもなんでもいいから資格を若いうちに取っておくことは良いことだと思っています。資格を持っていると社会の見る目が違ってきますので。一つの企業に一生いるのでしたら資格は不要かも知れませんが,これからは厳しい時代が続くから,対外的に通用するのは資格ということになりますね。
 また,よく学生に言うのは,「君が優秀なエンジニアだと証明するのは特許の数や論文の数だ」ということです。論文の数は各企業の取り組みが違うから一概に言えないのですが,知財を大切にしない企業はあり得ないので,そういう意味で何かを発明して特許を出願することは,エンジニアとしてとても大切なことだと話しています。

聞き手:企業にいれば,不遇な時期が訪れる場合もありますね。

虎澤:最先端の技術というのは,案外,社内では異端視されることが多いのです。わたしも,「いつになったら事業化できるのか」とか「金ばかり食っているじゃないか」と言われました。幹部の立場からすればそういう疑問はしょうがないのですが,そうした時に励ましになってくれるのは,やはり社外の友達なんです。それも同じ分野にいる。彼らも同じようなことを社内で言われているので,お互いの気持ちがよく分かるわけです。そういう意味で,他社のエンジニアの友人はライバルであり戦友であるといえます。学会や各種の委員会を通じて他社のエンジニアと積極的に交流をすることは,非常に大切なことだと思います。

聞き手:本日は,若い技術者や研究者の方にも大変興味深いお話をいただき,ありがとうございました。
虎澤 研示(とらざわ・けんじ)

虎澤 研示(とらざわ・けんじ)

1971年,京都大学 理学部卒業。同年,三洋電機?に入社して技術本部開発研究所に配属。1988年,同社 研究開発本部情報通信システム研究所 光技術研究部光記録材料研究室室長。1994年,名古屋大学において博士号取得。1997年,三洋電機 研究開発本部ハイパーメディア研究所 記録メディア研究部部長。1999年,同研究所所長。2004年,三洋電機を退職。同年,名古屋工業大学 テクノイノベーションセンター インキュベーション施設教授。2007年,同大学大学院工学研究科 産学官連携センター知財活用部門グループリーダー兼教授。2011年,同大学退職。同年,名古屋大学 産学官連携推進本部連携推進部 産学官連携コーディネーター(非常勤)。現在に至る。日本応用磁気学会論文賞,日本金属学会技術開発賞,日本貿易振興会感謝状(海外留学生受け入れによる国際貢献)を受賞。

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