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小集団的発想こそ日本のオープンイノベーション宇都宮大学 オプティクス教育研究センター コーディネータ 小野 明

コーディネーターという仕事

聞き手:コーディネーターとは具体的にどのようなお仕事なのかお聞かせ願えますか?

小野:いろいろありますね。一般に産学連携業務がよく紹介されますが,実際にやっている仕事は「通訳」でしょうか。中小企業などの技術者はよく,「大学の先生が言っていることは分からない」とか「敷居が高い」とおっしゃいます。そうした方々と大学の先生の間をつなぐ仲人みたいなことができればいいと思っています。また大学の先生方,特に若い先生には,ファンドの書き方などをアドバイスしています。今の研究ファンドは実用化を目玉にしないと取りにくいケースが増えていますから,「実用化とはこういうもの」と言ったり,「特許はこうやって出す」とアドバイスしています。また,県の技術センターとのコラボレーションを推進しています。JST(科学技術振興機構)における産学連携のビッグプロジェクトの推進アレンジ役も行っています。この仕事は特に「こうじゃなければいけない」という縛りはなく,ある意味,何でもやっていい仕事ですね。

聞き手:仕事の内容は,それぞれのコーディネーターにお任せするようなかたちになるわけですか?

小野:そうです。だから,コーディネーターは何をやったらいいのかいつも悩みますね。

聞き手:ゴールはあるのでしょうか?

小野:それもないのですよ。

聞き手:仕事の指示はどなたがされるのですか?

小野:わたしの場合は谷田貝先生です。ただ,谷田貝先生は具体的に「ああしろこうしろ」とはおっしゃいません。コーディネーターは自分で問題意識を持って,自分で行動しないといけないと思います。その割には給料は安いですが(笑)。

聞き手:ご所属は大学になるのでしょうか?

小野:はい,大学の所属です。ただ一方では,大学の奥深くまでは入れないというジレンマもあります。教授会に出席することもありませんし,学生と接触することもありません。そういう環境で働くコーディネーターには,モチベーションとそれなりの待遇が必要と感じています。コーディネーターの仕事ができる企業の技術マネージャーでそれなりの地位まで行った人間が,本当にやりたいと思えるようなモチベーションが必要ですね。
 企業というのは常にリフレッシュしていかなければならないから,わたしみたいなロートルがいつまでも大きな口を聞いていたらいけません。そういう人間は企業からどんどん出て行かなくてはいけないのですが,そうした人材・経験を生かす場は非常に大切だと思います。残念ながら今は,優秀な人材は韓国や中国企業に好条件で引っ張られるケースが多いのですが。

聞き手:これから日本を世界に打ち勝っていける国にしていくために,おっしゃられているような裾野の部分からきちんとやっていかないと,どんな大手企業でも1社だけではどうしようもない状況ですね。

小野:日本が立ち直るということは,日本国民すべてにモチベーションのある職を与えることが前提と考えています。それによって,お金が回り始めるわけです。本当に外貨が必要なのはエネルギーと食物を買う金で,これさえ買えれば,後はなんとかなります。グローバル化や円高で企業がどんどん外に出て行ってしまうと,そこで儲けた金を日本に運ぶから,また外貨ばかり貯まってさらに円高になってしまうわけです。
話が大きくなり過ぎましたが,今の自分の立場では,大企業から見て使い物になるように中小企業をレベルアップすることに,少しでもお役に立ちたいという思いがあります。日本経済全体にとって効果はわずかなものかも知れませんが,それがいつかは自分の生活に戻ってくるだろうと思って,この仕事をやり続けています。
小野 明(おの・あきら)

小野 明(おの・あきら)

1973年,大阪大学 大学院修士課程精密工学科卒業。同年,株式会社東芝に入社。生産技術研究所に配属。1983年,米アリゾナ大学客員研究員。1988年,大阪大学において工学博士号取得。1996年,東芝 生産技術センター光応用システムセンター長。1997年,技術士(機械部門)取得。1999年,株式会社東芝を定年退職し株式会社トプコンに入社。2000年,同社取締役兼執行役員。2003年,同社取締役兼株式会社トプコンテクノハウス代表取締役社長に就任。2006年,株式会社トプコン 常勤監査役,監査役会議長。2008年,株式会社トプコン顧問。2008年,宇都宮大学 オプティクス教育研究センター コーディネータ。現在に至る。

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