「これなら,俺は,やりたい」と思えるようなものをつかまえさせるのが教師の役目小柴 昌俊
私の教え子は皆,独自の成長をしている
聞き手:最後に,研究職で学生を指導されている大学の教員の先生方に向けて,学生を指導するに当たってのアドバイスを一言お願いします。小柴:私の教え子は一人一人がみんな違います。皆,独自の成長をしています。僕は,自分の所へ来た大学院の学生にどういうことをやらせようとか何とかということは考えないで,この男は一体どういうことに興味を持つだろうか,と考えました。当人が自分で興味を持ってやろうという気にならなかったら,どうしようもないです。伸び伸びと自分でやっていければ,報告もいりません。だから,教師としてやるべきことは,その子にいろんな経験をさせて,そのいろんな経験の中から「あ,これなら,俺は,やりたい」と思えるようなものをつかまえさせる,僕は,それが教師の役目ではないかと思っていました。僕は他のやり方を知らないですしね。いろんなやつがいたけれども,もう死んでしまったやつが4人もいます。私は子どもに先立たれた親みたいなもので,情けないです。
小柴 昌俊(こしば・まさとし)
1926年 愛知県生まれ 1951年 東京大学理学部物理学科卒業 1955年 ロチェスター大学大学院修了(Doctor of Philosophy) 1958年 東京大学助教授(原子核研究所) 1963年 東京大学助教授(理学部) 1967年 東京大学理学博士取得 1970年 東京大学教授(理学部) 1974年 東京大学理学部附属 高エネルギー物理学実験施設長 1977年 東京大学理学部附属 素粒子物理国際協力施設長 1984年 東京大学理学部附属 素粒子物理国際研究センター長 1987年 東京大学名誉教授 1987年8月?1997年3月 東海大学理学部教授 1994年 東京大学素粒子物理国際研究センター参与 2002年 日本学士院会員 2003年 財団法人平成基礎科学財団設立 理事長就任 2005年 東京大学特別栄誉教授 2011年 公益財団法人平成基礎科学財団へ移行 理事長就任●研究分野 素粒子物理学
●主な活動・受賞歴等
1985年 ドイツ連邦共和国功労勲章大功労十字章 1987年 仁科記念賞 1988年 朝日賞 1988年 文化功労者 1989年 日本学士院賞 1997年 藤原賞 1997年 文化勲章 2000年 Wolf賞 2002年 ノーベル物理学賞 2003年 ベンジャミンフランクリンメダル 2003年 勲一等旭日大綬章 2007年 Erice賞