いろいろな経験を積むためにも学生にはできるだけ海外で洗礼を受けさせる早稲田大学 教授 中島 啓幾
社会人になって数年は普通に経験できないことをさせてもらってきた
中島:1972年に富士通の研究所に入ったのですが,数年間は実は全く違うことをやっていました。たぶんご存じないと思いますが,磁気バブルメモリという,初期のパソコンに使われたものの研究開発です。そういう,光とは直接的に縁がないことをやっていましたが,後になってみると,いろいろな意味で普通に経験できないことを自分自身がさせてもらってきたのだと思います。当時としては半導体シリコンの最先端プロセスの一部も経験しました。といってもマスク数が2枚とか,せいぜい3枚あれば十分というシンプルなもので,結果が割と早く出てくる代わりに,サイズをどこまで小さくできるかという限界がありました。
社内にいろいろなグループがある中で,どうしても光通信用コンポーネントの技術が必要になり,「部品屋の中で協力できる人間はいないか」ということで,白羽の矢というか,たらい回しになった上でなので,もう白くはないですね,きっと(笑)。かなり色づいた羽が,余っていた私に刺さってしまいました。1977年秋のことです。
そこで桑原秀夫さんらが用意しておいてくれたいろいろな装置を「使っていいよ」と言ってもらい使わせていただいて,若い人と一緒に小さなグループをつくり,わずか1年半で国際会議に論文を出したのは,ちょっと無謀だったと思います。でも,いろいろな人たちのバックアップがあったのでできました。ただし,私なりに工夫はしたのですけれども,ものの見事に自分のデビューは苦い経験となりました(笑)。 <次ページへ続く>
中島 啓幾(なかじま・ひろちか)
1948年 東京都生まれ 1966年 麻布高校卒 1970年 早稲田大学理工学部応用物理学科卒 1972年 早稲田大学大学院理工学研究科修了 1972年~1996年 (株)富士通研究所 1984年~1996年 早稲田大学 非常勤講師 1996年 早稲田大学 教授(現在に至る) 1998年 ボストン大学 客員教授 2001年~2014年 応用物理学会日本光学会微小光学研究グループ 実行委員長 2002年~2014年 日本女子大学 非常勤講師 2003年~2005年 科学技術振興機構(JST)研究開発センタ出向 シニアフェロー 2011年~2013年 応用物理学会 理事(総務担当) 2012年 応用物理学会 春季学術講演会 現地実行委員長●研究分野
酸化物単結晶を用いた微小光学,光導波路デバイス,光集積回路と応用
●主な活動・受賞歴等
第9回光産業技術振興協会桜井賞受賞(1993年)
第2回応用物理学会フェロー表彰(2007年)
応用物理学会微小光学研究会運営委員長(2015年~)