思い続けていれば,その願いはいつか必ず現実化できる慶應義塾大学 満倉 靖恵
「よく学び,よく遊ぶ」中途半端は一番よくない
聞き手:最後に,工学を学ぶ学生や若手技術者に向けて,メッセージをお願いします。満倉:まず何かやりたいことを見つけることが第一です。そのうえで,それを実現させるんだと思い続けること。思い続けていると,本当に実現化するのです。こういう研究がしたい,これが欲しいと思っていると,いつの間にか手に入れています。もちろん,研究だけではないです。私は,大学に勤め始めたときから,いつかポルシェに乗ってやると思っていました。勤め始めたのは国立大ですから,その給料では絶対ポルシェは買えません。でも,ポルシェが欲しいとか,ポルシェに乗っている自分を考えていると,自然に脳が関連する情報をキャッチしているのです。ふだん自分の車を運転しているときでも,ポルシェの情報だけが目に入ってきたりします。あの型は嫌だな,この型がいいなとか,ホイールはこっちのほうがいいなとか,いろいろな情報が入ってきます。あるいは,研究でも,こんな研究したいとずっと思っていると,そういう研究者と一緒に研究することができるようになります。いつかつながるのです。
研究でも一日一日を何となく過ごすのではなく,これをやるんだと強く思うと,いつかは叶うのです。家が欲しいと思ったら,「家なんか買えない」で終わるよりは,どんな家が欲しいか,自分の頭の中で具体化して思い描いていくと,手に入れることができるようになります。私は,ある芸能人が大好きで,その芸能人に会いたいとずっと思っていました。いつか会ってやると思っていたら,私がテレビに出るようになり,今は何回も共演しましたし,普通に会って普通に話すようになっていました。思い続けると叶うのです。
そのためには,具体的にしていくことが大切です。工学を学ぶ人たちということで言えば,こういうものが世の中に欲しいと思ったときには,それをつくるためにはどうしたらいいのかを具体的にするのです。会社を興したいというのであれば,会社を創るためにはどうしたらいいのかを,一つひとつ具体的に考え,組み立てていきます。そうすると,一つひとつそのための情報が手に入ってくるのです。
それから,運を味方につけることです。運のいい人の周りにいくと,それが連鎖することがあります。逆に,怒っている人のそばにいくと,自分も嫌な気分になることがありますよね。嫌な気持ちというのは脳波で言うところの周波数が高く,その振幅も強い状態です。一般に速く強い信号ですからきっと伝わりやすい特徴であるのではないかと思っています。
思いをかなえるためには,集中力も大事です。満倉研究室のモットーは「よく学び,よく遊ぶ」です。メリハリが大事で,集中するときは集中します。研究するときは研究に集中し,遊ぶときは遊ぶのです。中途半端にしていたらカミナリを落とします。思いをかなえるためにも,運を味方につけるためにも,そこは重要だと思っています。
満倉 靖恵(みつくら・やすえ)
1999年 徳島大学工学部知能情報工学科助手 2002年 岡山大学情報教育コース専任講師 2005年 東京農工大学大学院助教授 2007年 同大学院准教授 2011年 慶應義塾大学理工学部准教授 2018年 同大学教授●研究分野
生体信号処理,脳波解析,感性工学,脳神経科学