【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

光にこだわり,共創共生で地域から世界に発信していきたい株式会社フォトニックラティス 大沼 隼志

面白いこと,自分らしさを大切にして世界を見て欲しい

聞き手:工学を学ぶ学生や若手技術者に向けて,メッセージをお願いいたします。

大沼:3つあります。1つ目は,面白いことを追いかけましょう,です。若手の頃に上司から「社会人はマラソンだ」と言われたのを覚えています。42.195 kmではないですが,社会人は42年くらいのマラソンだと言うのです。最初に一生懸命走っても抜かれるかもしれないし,やりすぎても息切れします。長いマラソンだからじっくりやったらいいと言われ,今,私自身,本当にその通りだと実感しています。最近は,若手の皆さんはその場その場の苦しさで,体調を崩してしまう方も増えているように思います。しかし,どんなにがんばっても,短期,中期,長期と見ると,好調不調の波はあります。ですから,不調なときに,そのネガティブな部分をどう乗り切るかということが大事だと思います。今は苦しいけれども,これは自分にとって追いかけるべき目標なのか,本当にやりたいことは何なのか,何より面白いと思えるのか。こうしたことを感じられるときにこそ,つらいことを乗り越えられます。一人一人がもっている興味の軸を大事にしてほしいと思います。
 2つ目は,自己肯定,自分らしさを大事にしようということです。能力が高い人というのは,世界中どこにでもいます。ですから,ある種目を突き詰めると,自分より上の人が絶対いて,自分は勝てないと失望することがあります。しかし,最近の社会は非常に多様化しており,さまざまなものが絡み合って複雑になってきています。また,これからは会社の看板だけでなく,個人の看板がより大事になってきます。ですから,1つの分野だけで勝負するのではなく,少なくとも2つの分野で経験を積んで,そのかけ算で自分らしさを出すことをお勧めします。自分のことで言えば,偏光の産業と大学の経験をかけ算して,(偏光の産業を理解し,大学ともコミュニケーションを取ることで)新技術や新商品を創っていく形で自分らしさを出せるように意識しています。意図的にかけ算をやってほしいと思います。
 最後の3つ目は,自分の目で直接海外を見てみることが大事です。今はインターネットで情報が簡単に手に入りますが,各国にはそれぞれの考え方や文化があります。私も会社のおかげで十数か国に仕事で行くことができ,そこで体験的に感じることができました。特に欧米に行くと,「あなたの専門は何ですか?」「あなたの考えは何ですか?」「あなたのユニークなところは何ですか?」と必ず聞かれます。そうすると,会社の看板ではなく,自分の看板を見つめ直す良い機会になります。直接自分で行って,文化や歴史を含めて体験し理解しないと,海外のビジネスは見誤ります。若くて元気があるうちに体験を積んでほしいし,自分の課題や将来のアイディアを見つける機会にしてほしいと思います。

2019年 宇都宮大学の光学専攻修了生を対象にフォトロン賞設置と贈賞。


大沼 隼志

大沼 隼志(おおぬま・たかし)

1999年 新潟大学工学部電気電子工学科卒業
1999年 株式会社フォトロン入社
2014年 博士(工学)宇都宮大学
2017年 株式会社フォトロン 光学計測部長
2021年 株式会社フォトニックラティス 代表取締役社長(現職)
2021年に株式会社フォトニックラティスは株式会社フォトロンの子会社化
株式会社フォトニックラティス:https://www.photonic-lattice.com/

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