セミナーレポート
誰にでもわかる「安全・安心のための画像センシング」三菱電機(株) 鷲見 和彦
本記事は、画像センシング展2010にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
異常を検知する監視技術
次は,映像監視の話をしたいと思います。防犯カメラの録画サービスには,一般の監視カメラやエレベーター内での監視といったものがあります。このエレベーターは,他人と一緒に閉空間に入らなければならないという,よく考えれば怖い世界です。特に深夜,知らない人と乗り合わせてしまった場合,エレベーターの中に防犯カメラがあれば,ある程度犯罪の抑止になります。現在,監視カメラは犯行後の事件解決にすでに寄与していますが,より犯罪を抑止したいというニーズがあり,今いろいろと工夫をしているところです。例えば,最近では防犯検知システムへ発展させる取り組みが進んでいて,異常事態には警告アナウンスや運転モードを変えて犯罪者や急病人に対処しています。
監視カメラでは,記録密度を上げると総録画時間が短くなってしまうので間引きして記録していますが,「何かありそうだ」という時刻の記録密度を上げれば,もっと役に立ちます。事件解決への寄与向上や検索の容易性,重要な部分における鮮明録画によって,犯罪抑止効果,犯罪時の被害軽減効果の向上といったことが期待できると思います。
そこで,われわれが現在研究しているのが,エレベーターの中で妙な動きがあった場合にのみ人物を検出し,平常時には人が乗っていても反応しないようにする技術です。窓の付いたエレベーターの場合,窓の外で余計なものが動くのでこうした検出は非常に難しくなります。しかし,ここにも最新の識別技術が使われていて,窓の外の景色の変化,人と物の明るさの分布の違いなどを学習して人の領域を抽出することができます。さらに平常時の背景変化や,人が静かに乗っている時の動きのパターンを識別器を通してあらかじめ学習してあるので,それも含めて人の有無を判定します。
これらの技術によって,人が取り残されている場面や犯罪らしい行為があった場面を,監視カメラの映像から見つけて取り出すことができるようになります。
<次ページへ続く>
三菱電機(株) 鷲見 和彦
1982年,京都大学工学部電気電子工学科卒業。 84年,京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士修了。84年,三菱電機株式会社生産技術研究所入社。 89?90年,メリーランド大学客員研究員。90年,三菱電機株式会社産業システム研究所。97年,京都大学工学博士。2002年~,三菱電機株式会社先端技術総合研究所,そして現在に至る。03?06年,京都大学大学院情報学研究科研究員(COE)・客員教授