セミナーレポート

“ヒトを超える”基本性能と“ヒトを超える”多様な対応で進む実用化(株)日立ハイテクノロジーズ 野口 稔

本記事は、画像センシング展2012にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

鉄道,素材産業などで活用される画像応用システム

 現在,画像応用システムはさまざまな機能・機器を追加する形で,農林水産業から,鉱業,製造業,インフラ,サービス業に至るまでさまざまに応用されています。ここではその活用例について,産業界ビジョンシステム,生産システム画像処理,半導体検査・計測の3つの分野から見ていくことにします。
 産業界ビジョンシステムの実用例としては鉄道の架線計測が上げられます。電車は電気を架線からパンタグラフに伝え,モーターを回して動きますが,パンタグラフは振動するので,架線の保守管理は極めて重要です。現在,架線計測は目視か専用車両で行われていますが,目視は点計測で効率が悪く,専用車両は効率的ですが,機器が大型だという問題があります。そこで,普通の電車の屋根の上に搭載した小型機器で,営業運転しながら,計測し,業務を効率化したいと鉄道会社は考えています。そのために,2個のCCD(Charge Coupled Device)カメラとラインセンサーからなる架線検測装置を屋根に搭載して,今までと同等の結果が得られるような仕組みが作られています。
 生産システム画像処理では,ガラス溶融プロセスモニターや電子部品組み立てがあります。ガラス製造には,溶融,形成,加工のプロセスがありますが,溶融プロセスでは製品を円滑に作るために,温度や環境,設備の異常,製品の状態などの情報に加えて,ベテラン技能者の五感が求められます。そこで炉内撮像用の専用カメラで,原料の溶け具合をモニタリングし,ベテランオペレーターの経験値を加えることで,画像による定量化と異常検知を可能にするための取り組みが進められています。
 一方,電子部品組み立てでは,半導体と基板の製造,部品実装までは自動化・無人化されていますが,個別部品実装,筐体(きょうたい)組み込み,機能検査・最終外観検査は人手による工程が多く存在します。そこで,設計・製造・検査の三位一体の対応や官能検査の定量化,見えない部分の検査のための照明撮像技術の活用,プロセス条件など多方面の知見やデータを組み合わせた検査で,自動化・無人化していくことが必要です。そのためには,見えない部分でヒトを超え,汎用品や技能量でヒトに近づくことが求められます。

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株式会社日立ハイテクノロジーズ 野口稔

1982年,東京大学精密機械工学科卒業。同年,(株)日立製作所入社。同社生産技術研究所にて,光学応用検査・計測技術の研究開発に従事。1993?1994年,米国コロンビア大学客員研究員。2004年,(株)日立ハイテクノロジーズ。現在,同社経営戦略本部新事業創生部部長。

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