セミナーレポート
“ヒトを超える”基本性能と“ヒトを超える”多様な対応で進む実用化(株)日立ハイテクノロジーズ 野口 稔
本記事は、画像センシング展2012にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
全製造工程で利用される半導体検査・計測装置
次に半導体検査・計測分野を見ていきます。半導体検査装置は半導体製造装置設備投資額全体の10%という大きな比率を占めています(図1)。 それだけコストと手間をかけて,検査するのは配線部分に1つでも欠陥があると,ロジックが動かないからです。そのため,半導体メーカーではウエハー製造のすべての工程で,異物検査や欠陥検査を行い,スクラッチやボイド等を管理しています。検査装置は1台数千万円から数億円と高価であり,検査装置製造企業は半導体メーカーから,設備総合稼働率(OEE)を上げることを要求されています。そのためには,スタンバイ時間や予期せぬエラー,メンテナンス時間を極力減らすと共に,非検査・非計測,誤検査・誤計測の少ない,外乱が加わっても忠実に制御可能な強靱な検出系とアルゴリズムを持ち,パラメーターを設定するレシピ作成が短時間で,簡易に行えるようにすることが必要です。製造プロセスごとに見ていくと,1つ目がウエハー表面検査装置による鏡面ウエハー上異物検査です。シリコンウエハー上のサイズ欠陥発見の要求レベルは年々低くなっており,現在,一般的になっている20nm(ナノメートル)の欠陥を見つけることは,直径300kmのエリアで約20mmの1円玉を探し出すことに相当します。それを発見するウエハー表面検査装置の原理は簡単で,高速でウエハーを回し,レーザー光線をあて,結晶起因欠陥や加工起因欠陥,異物など検出欠陥の座標を出力します。そして,レビュー装置とリンクさせて,検査結果を表示し,発生原因を踏まえた対策を行います。検査自体も難しいのですが,ウエハー上にゴミを5つ以上付着させてはいけないという厳しい要求をする企業もありますし,高速に回転しているので,装置の中で発生する気流を抑える工夫も必要です。
2つ目が暗視野光学式検査装置で行うウエハー上パターン検査です。この装置は高精度大型顕微鏡で,ライン上に照射するレンズもセンサーも装置用に設計され,高速モードで視野10mm,高感度モードで解像度100nmほどです。また,30時間のハイビジョン画像データを数分で,処理する専用画像処理マシンを搭載しており,特殊撮像系製品の代表例です。ウエハーの状態は工程によっても,ウエハーの中の位置によっても異なります。感度を上げるために,しきい値を下げると誤検出が発生し,誤検出しないようにしきい値を上げると,見逃しが生じてしまいます。それを防ぐために,人間が条件を付けますが,それをレシピ設定といいます。レシピ設定が簡単になれば,稼働率が上がるため,私たちはダイ間で対応する位置の明るさデータを用いた統計的な処理で,散乱の状態が異なるパターンごとにしきい値を設定する背景別統計的しきい値法を開発しました。この強靱なアルゴリズムでパラメーターが1つという簡易なレシピのため,稼働率向上を実現することができました。
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株式会社日立ハイテクノロジーズ 野口稔
1982年,東京大学精密機械工学科卒業。同年,(株)日立製作所入社。同社生産技術研究所にて,光学応用検査・計測技術の研究開発に従事。1993?1994年,米国コロンビア大学客員研究員。2004年,(株)日立ハイテクノロジーズ。現在,同社経営戦略本部新事業創生部部長。