セミナーレポート
生活・社会・産業の各分野で進む実用化 プロジェクターの高速化などで,発展する3D画像センシング技術オムロン(株) 諏訪 正樹
本記事は、画像センシング展2013にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
必要な要件は正確さ,高速性,安定性,使いやすさ
このようにして,カメラとプロジェクター,パソコンがあって,パターン照射ができれば,距離が測れます。そこで問題になるのは,カメラとプロジェクターの配置の仕方です。外界の1mを3Dセンサーとして1mとして測れるように,物理的整合性をとることが求められます。物理的整合性が必要なカメラに,この距離が1m,これが20cmと教えるのがカメラキャリブレーションです。たくさんの手法がありますが,現在存在する手法で,原理的な限界までの計測精度を引き出すことは十分可能です。また市販の線形演算,最適化手法などを含む数値演算パッケージで容易に実装することができます。カメラキャリブレーション原理を基に,カメラとプロジェクターを設定し,より計測精度を上げるためには,ノイズ耐性を向上させる必要があります。
ここまで紹介した三角測量による3D画像センサーは鏡のような鏡面性を持つ物体には対応することができず,鏡に映ったものを三角測量してしまいます。ですから,同じ距離にあるボールでも,鏡の場所で計測しますので,鏡が近いと距離は短く,遠いと長く測ってしまいます。そのため,鏡面物体の計測では照明を工夫し,拡散板を挟んで,プロジェクターの光を拡散させて,鏡面物体にパターンを照射し,実際の距離を測ります。
こうした点を踏まえて,3D画像センシングの実用化を考えるポイントは次の4つにまとめることができます。1つ目が高精度/高確度,ロバストなどの正確さです。絶対的な距離を求めるような場合には,同軸測量よりも三角測量の方が優れています。2つ目が高速性,3つ目が安定性です。温度が変化すると距離も変わってしまうので,三角測量の方が同軸測距と比べ,温度変化に対応するための制御が難しいことが多いです。また距離はラフでもいいが,別の情報も併せて得たいという場合は,TOFの方が合っています。マイクロソフトがこの5月に発表した「Kinect2」は三角測量から同軸測距(TOF)に方式を変更しましたが,そうした点が背景にあるのだと思います。そして,4つ目が設計段階での安全対策を施すフールプルーフやカスタマイズ性などの使いやすさです。
オムロン(株) 諏訪 正樹
- 1997年4月
- オムロン(株) 入社
- 2008年4月
- オムロン(株) 技術本部コアテクノロジーセンタ 技術専門職
- 2010年4月
- 立命館大学 理工学研究科 客員教授 兼任
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 客員教授 兼任